
遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。

今日も配下の怪獣たちに向かって、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
また恐るべき侵略の魔の手が、緑の地球に迫るのだ!
イフ「時は来た! 今こそ地球征服の時だ!
怪獣軍団の威力の前に、抗えるものは何もなし……
屈強の戦士たちよ、行け! 行け! 行けーいっ!!」
おお、何と言うことであろう――

またまた恐怖の牙と爪が、平和を脅かさんとしているのだ。
危うし地球、危うし宙マン!
……が、ひとまずそれはさて置いて。

1月、北海道千歳市。
お屠蘇気分も抜けきり、今や「日常」の真っただ中である。

であるからして、ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」もまた
相も変わらず平穏で、呑気そのものの日常なのであった。
落合さん「さぁ皆様、そろそろお昼ご飯に致しましょう!」

ビーコン「いえっふ〜、メシメシ! ハラ減ったっス〜」
宙マン「今日のおかずは何かな、落合さん?」
落合さん「今日は油淋鶏(ユーリンチー)を用意してみましたわ」

ビーコン「うひょひょ、出た出た!
もうね、このビジュアルからして堪んねっスよ!」
宙マン「からっと香ばしく揚がった鶏、艶やかな甘酢ダレ……
相変わらず流石の仕事ぶりだねぇ、落合さん」
ピグモン「はうはう〜、匂いだけでお腹が減っちゃうの〜」
落合さん「うふふ、嬉しいご反応ありがとうございます。
それでは出来立てのうちに、美味しく頂きましょうか!」
ビーコン「いえっふ〜、異議なしっス!」
ピグモン「あぁ美味しそうなの〜、いっただっきま〜(す)……」
……と、各々が料理に箸を伸ばしかけたその時!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「あ、あらあらあらあらっ!?」
ピグモン「きゃああんっ、地震なの、おっかないの〜!(涙目)」

ビーコン「どひ〜っ、よりにもよって何つータイミング……!(汗)」
宙マン「さては、またまた怪獣軍団か……!?」
「チャギャギャ、その通り……!」
落合さん「(表情がこわばり)……へっ!?」
「チャギ、チャギャギャ〜っ!!」
その名もズバリの“ゴキブリ怪獣”、ゴキノザウルス出現!

ビーコン「どひ〜っ、飯時に勘弁して欲しいっス!(汗)」
落合さん「えぇ、本当に困った方ですこと!」
ゴキノザウルス「チャギャギャ……「方」じゃないんだなぁ、これが。
今日は特別サービスで、もう一匹来てるんだぜ!」
宙マン「……なンだと!?」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!

ゴキノザウルスの言葉を裏付けるように、再び鳴動する大地。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をも軽々と引き裂いて
地の底から今また、姿を現わさんとしている第二の影。
……果たして、それは!?
「チュイィィ〜ンっ!!」
ピグモン「ああっ、今度はおっきなネズミさんなの!」
落合さん「ですが、あの体と羽は鳩のようにも……」
ビーコン「……鼠と鳩の、合いの子っスか!?」
「チュイィ〜ンっ、ご名答!」
「だからこそ、人は呼ぶのさ――
死と破壊の使い、双頭怪獣ネズバードンってなァ!」
ゴキノザウルス「チャギャギャ、そして俺の名はゴキノザウルス!」

ビーコン「ひぇぇ! ゴキブリに、ネズミに、鳩……」
落合さん「害虫・害獣てんこ盛りではございませんの!(汗)」
ネズバードン「チュイ〜ンッ! ありがとう、いい反応ありがとう!」
ゴキノザウルス「公害怪獣たるもの、やっぱこうじゃないとなぁ――
暗黒星雲から、わざわざ出張った甲斐がないってもんだぜ!」
ネズバードン「ああ、全く全く。いい気分だぜ、相棒!」
ビーコン「ドン引かれて逆に喜んじまってるしぃぃ〜!(汗)」
宙マン「……うぬっ!」
ヴィラニアス「ガハハハッ! まぁ見てくれや、イフの叔父貴!
ただでさえ兇悪な奴らが、ああして並び立ったからにゃあ……
パワーは二倍、三倍……何十倍って言っても過言じゃねぇ」
ヴィラニアス「戦いは「数」でゴリ押しだぜ、叔父貴!」
イフ「うむっ、やるがよい、ゴキノザウルスにネズバードン!
お前たちこそ、怪獣の歴史に冠たるべき勇者であると……
魔王たるワシと、全宇宙に証明してみせよ!
ネズバードン「チュイ〜ンっ、お任せ下さい、魔王様!」
ゴキノザウルス「俺らは今、やる気パワーが燃え上がってますぜ!」
ビーコン「どひ〜っ、そんなの燃やさなくていいんスよ〜!?」
落合さん「あぁもう、酷いランチタイムですわねぇ!(汗)」

怪獣魔王の命を受け、進撃開始する二大公害怪獣!
迫り来る巨体を前に、右往左往して逃げ惑う人々。
かくして北海道千歳市は、またまた大パニックへと陥った――

だが、そんな危機を黙って看過するような防衛隊ではない。
タクティカル・スーツに身を固めた地上部隊の精鋭隊員たちが
おのおのの武器を手に、車両から降りたったかと思えば……
同時に上空からは、航空部隊の戦闘機がスクランブルをかける。
落合さん「あら、防衛隊の皆様、お早いお着きで!」
ビーコン「出前迅速、作業も迅速……
あとは怪獣退治も、迅速にお願いできると……ねぇ!?」
ピグモン「防衛隊のおじさんたち、しっかりなの〜!」

ゴキノザウルスめがけて花開く、戦闘機隊のロケット砲攻撃!
同時に地上部隊も、ネズバードンへと攻撃開始。

迫り来る巨大怪獣めがけて、命知らずにも肉薄していき……
専用銃が、バズーカ砲が、ネズバードンめがけて叩きこまれていく。

だが、そんな勇猛そのものの戦いぶりでさえも、無駄に張り切る
ニ大怪獣の勢いを押しとどめるには及ばない。
ゴキノザウルス「チャギャギャ〜、スっ込んでろィッ!」
「……う、うわぁぁぁっ!?」

ゴキノザウルスが額から放つ破壊光線!
その直撃を受け、戦闘機は一機、また一機と撃墜されていく。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
落合さん「ただでさえ、一頭だけでも厄介な怪獣さんですのに……」
ビーコン「二匹同時の相手は、やっぱ無理あったんスかねぇ!?」
……などと、人々が嘆いたりボヤいたりしている間にも。

巨体に物を言わせ、傍若無人に暴れ回る二大公害怪獣。
今や平和な千歳市は、地獄の業火で焼き尽くされる手前であった!
ネズバードン「チュイ〜ンっ、どんなもんだィ!」
ゴキノザウルス「思い知ったか、俺らの力!」
落合さん「いけませんわ……この状況は、かなり!」
ビーコン「どひ〜っ、このままじゃ千歳がおしまいっス!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの〜」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、二大怪獣の前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣ども、これ以上の乱暴狼藉は見過ごせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!

ビーコン「いえっふ〜、任せたっスよアニキぃ〜!!」
落合さん「今や、お殿様だけが頼みの綱です!」
ピグモン「はうはう〜、宙マン、がんばってなの〜!」
ゴキノザウルス「チャギャギャ〜、出たな、宙マン!」
ネズバードン「二対一だぞ、お前に勝ち目はねぇぜ!」
宙マン「さァて、それはどうかな……!?」

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ゴキノザウルス「野郎、これでもくらえッ!」

額からの破壊光線で先制攻撃のゴキノザウルス。
だが、その一閃は宙マン・プロテクションに無力化された。
ゴキノザウルス「な、何っ!?」
宙マン「どうだ、これで判っただろう――
お前たちが何頭がかりでも、私には問題じゃないって事さ。
かかって来い、雑魚どもが!!」
ゴキノザウルス「チャギャ〜っ、よくもそこまで抜かしやがったな!」
ネズバードン「お前をズタズタのギタギタにしちゃるぜィ!」
宙マン「できるものなら、やってみろ――勝負だ!」
「チュイィィ〜ンッ!」

ヒステリックな咆哮をあげ、持ち前の飛行能力で大空へと羽ばたき
一直線に突進してくるネズバードン!
その巨体を、すんでのところで身をかがめて回避する宙マン。

激突、宙マン対ゴキノザウルス・ネズバードンの極悪タッグ!
落合さんたちが見守る中、二対一のハンディキャップ・マッチは
早くも白熱の様相を見せて行く。

右から、左から、宙マンを挟みうちにして……
凶暴な本能を全開に、猛然と襲いかかってくる二大公害怪獣。
まずは眼前のゴキノザウルスと一戦交える宙マンであったが、
ネズバードン「チュイ〜ン、俺を忘れちゃいやせんか〜い!?」

そうなると、今度は背後からネズバードンが襲いかかってくる。
振り返ってネズバードンにチョップを叩きこむ宙マンだったが
そこに生じる一瞬の隙を、ゴキノザウルスは見逃してはくれない。

あちらを相手にしていれば、すぐまた別方向からの攻撃……
これを同時に相手して、捌ききらなければいけない、と言うのが
ハンディキャップ戦の面倒でややこしいところである。
ゴキノザウルス「チャギャ〜っ、背中がガラ空きだぜ!」

ネズバードンを相手取る宙マンの背後から、ゴキノザウルスが迫る。
そのまま一気に、宙マンの肩口へ食らいつくつもりであったが……
宙マン「――甘いッ!」

見よ、この一瞬の技の冴え。
振り向きざまに繰り出した宙マンの蹴りが、ゴキノザウルスの腹へ
吸い込まれるようにクリーンヒット!
ゴキノザウルス「(悶絶)ちゃ、チャギャギャッ!?」

堪らず、ゴキノザウルスがもんどりうって倒れたところへ――
宙マン「くらえ!
宙マン・フラッシュボンバー!!」
シ ュ パ ァ ァ ァ ー ン ッ !

右手に集中させた闘気を、裏拳とともに勢いよく解き放ち……
赤いエネルギー弾として、怪獣めがけて叩きこむ荒技。
フラッシュボンバーの一撃が、ゴキノザウルスを直撃!!
ゴキノザウルス「チャギャぁぁっ……相棒、俺の仇を……!」
ネズバードン「チュイ〜ンっ、よくもゴキノザウルスを!」

逆上し、宙マンへと突進してくるネズバードンだったが――
宙マン「それっ、次はお前だ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ネズバードンを直撃!!
ネズバードン「チュイィィ……ごめ〜ん相棒、俺も負けちゃったよ〜っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりました……お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ〜、やっぱアニキ、任せて安心っス!」
ピグモン「はうはう〜、宙マン、ありがとうなの〜♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
良い気になるなよ、怪獣軍団の精鋭はまだまだおるわ!
いまに、いまに見ておれ〜っ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。

かくして我らが宙マンの活躍により、恐怖の二大公害怪獣は斃れ
街には再び、のんびりした日常が戻ってきたのであった。
ビーコン「いえっふ〜、アニキアニキ、どーもお疲れさまっした!」
宙マン「いや〜、お待たせ、お待たせ。
それはそうと、怪獣退治でお腹もすいたことだし……」
ピグモン「はうはう〜、お待ちかねのお昼ご飯なの〜♪」
落合さん「えぇ、勿論ですとも――
落合特製の油淋鶏、冷めても美味しゅうございますわよ!」
宙マン「うんうん、そう来なくっちゃ!」
ビーコン「冷めた肉ってのも、それはそれで旨いもんスよねぇ。
しっかりバッチリ食って、精つけるっスよ〜!」
落合さん「えぇ、えぇ、是非そうなさって下さいませ♪」

ビーコン「ヒヒヒ、そして旨いもん食って精をつけたら……
あとはもう、その精を迸らせるばかりっスよね!
落合さんの豊満なお肉が、みるみるアツアツの食べ頃に。
女体料理人・ビーコンちゃんの独壇場っスよ〜☆」
落合さん「……(ぷ ち っ!)」
げ し っ !
落合さん「ねーい、団欒の空気をブチ壊すんじゃありませんっ!」
ビーコン「どひ〜っ、落合パンチは灼熱の一撃っスぅぅ〜」
宙マン「はっはっはっはっはっ」
今日も本当に有難う、宙マン。
だが、怪獣軍団の野望は尽きない……
さぁ、次回はどうなるかな?

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