
千歳市のすぐ隣、北海道・胆振支庁の苫小牧市。
北海道を代表する港湾・工業都市として知られる苫小牧だが、その一方で
多くの豊かな自然が残されてもいるのである――

中でももっとも有名なのが、ここ、ウトナイ湖。
今回の「宙マン」の舞台である。
みくるん「ほら、皆さん、こっちですよぉ〜!」
ながもん「……早く、早く」

ビーコン「ひ〜、ちょっと二人とも、飛ばしすぎっスよぉ〜」
ピグモン「みくるんちゃん、ながもんちゃん、待ってなの〜」
宙マン「はっはっはっはっ、二人とも元気だねぇ♪」
みくるん、ながもんの後に続くのは、ご存じ宙マンファミリー。
今日は古くからの地元民であるコロポックル姉妹の案内で、ここウトナイ湖まで
白鳥見物にやってきた、というわけだ。
ウトナイ湖――
真雁や白鳥の集団飛来地として知られ、1981年には「日本野鳥の会」によって
我が国初の“バードサンクチュアリ”に指定された、まさに野鳥たちの楽園である。
落合さん「でも、いくらここが白鳥たちの訪れる湖だと言っても……
普通、渡り鳥が訪れるのは冬、と相場が決まっておりますでしょう?」
ビーコン「そうそう、せっかくの観光名所も、旬を外しちゃどうしようもないっス〜」
ながもん「(ボソッと)チッチッチッチ……甘い、甘い」
みくるん「心配しなくっても、白鳥ならちゃ〜んといますよぉ〜。ほらっ!」
落合さん「……あらまぁ、ほんとにっ!」
ピグモン「はうはう〜、白鳥さんがいっぱいなの〜♪
……ほらほら、こんなに近づいてもだいじょうぶなの〜」
宙マン「うん、随分人間に慣れてるもんだねぇ」
ビーコン「……つか、オイラは怪獣でアニキはプラネット星人なんスけどね。
いやぁ、でもホントにこの近さ、富士サファリパークも顔負けっス〜」
みくるん「ずうっと餌付けしてますから、ここにいれば餌が貰えるんだ、って
白鳥たちにも分かるんですよね〜。
だから一年ずっと、渡らないでこの湖にとどまってる白鳥さんもいるんですよ」
ながもん「人間を、ちっとも、怖がらない……とっても、人懐っこいの」
宙マン「なるほどねぇ、これは確かに鳥の楽園だよ」
落合さん「人懐っこいと言いますか、それとも単に図々しいのか……
ふふふ、なんだかどこかの誰かさんみたいですわね?」
ビーコン「……ちょ、なんでそこでオイラに振るんスかぁ!?」
宙マン「はっはっはっはっ」
優雅に泳ぐ白鳥を眺めながら、心和やかなひとときを満喫する宙マンファミリー。
と、その時!
ながもん「あっ。……あれ……!」

おお、見よ!
観光客たちの目の前で、幾度もの青白いスパークを放つウトナイ湖。
そして激しく湖面が泡立ち、波しぶきとともに姿を現したのは――!
「あんぎゃあぁぁ〜っ!!」
耳をつんざく咆哮とともに、湖底から浮上してきた巨体。
ウトナイ湖に身を潜めていた、宇宙怪獣ベムラーだ!
落合さん「……あらまぁ、なんてことでしょう!」
ピグモン「白鳥さんたちが楽しそうに泳いでるのに、乱暴しちゃいや〜んなの〜」
ビーコン「そうっスよ、アンタなんかお呼びじゃないっス!」
ベムラー「あんぎゃあぁ〜っ、うるせ〜っ!
どいつもこいつも白鳥、白鳥……そんなに白鳥が好きか、白鳥がそんなに偉いのか〜!?
なぁにが野鳥の楽園だ、ンな物ぁ俺の手でブッ潰してやるぜ!」

夏休みシーズンをウトナイ湖で過ごしていたベムラー。
そのまま大人しくしていれば何の問題もなかったものを、生来の悪たれ根性から
ウトナイ湖の白鳥たちに対して、見当違いもいいところの逆恨み!
ベムラー「あんぎゃあぁ〜、ベムラー様の熱いのを食らいやがれ!」
ビーコン「ど、どひ〜っ!」
口から怪光線を吐き散らし、暴れ始めるベムラー。
ウトナイ湖周辺の豊かな自然が、みるみる炎に包まれていく!
ピグモン「はぅぅ、これじゃ白鳥さんたちが可哀想なの〜」
ながもん「宙マン。……お願い……!」
宙マン「ああ、もちろんだとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」

光に包まれ、みるみるうちに巨大化する我らのヒーロー。
さぁ行け宙マン、ベムラーをやっつけろ!
宙マン「宇宙怪獣ベムラー、弱い者いじめも大概にしろ!」
ベムラー「うるせぇ、宙マン! お前も黒コゲになりたいか〜!?」
イフ「ようしベムラーよ、その意気だ!
みごと宙マンを倒して、男を上げて帰って参れ――
その暁には、お前の大好物の宇宙エビグラタンをたらふく食わせてやるぞ!」
ベムラー「あんぎゃあぁ〜、お任せを、魔王様!」

宇宙エビグラタンは頂きだとばかり、怪光線で先制攻撃のベムラー。
だが、その一撃は宙マン・プロテクションによって受け止められる。
ベムラー「なっ……そ、そんなのありかよ!?」
宙マン「はっはっはっはっ、大ありだとも。
……少なくとも宇宙の平和を乱す、お前のような無法者よりは遥かにな!」
ベムラー「あんぎゃあ〜、そのスカした物言い、気に食わないぜ!」
怒りに燃え、宙マンめがけて突進していくベムラー。
ウトナイ湖畔を舞台に、大地を揺るがす大格闘が展開される。
宙マン「それっ、宙マン・キック!」
一瞬の隙を突き、宙マンの繰り出したハイキックがベムラーの顎にヒット。

更にここから、怒涛のように畳みかける宙マン・アクション。
たまらず倒れたベムラーに躍りかかって、二発、三発とチョップの雨あられ。
宙マン「宙マン・リフター! どりゃああっ!」

おお! 2万5千トンのベムラーの巨体を、軽々と投げ飛ばす超パワー!
ザブーンと水しぶきをあげて、ベムラーがウトナイ湖に没する。
よろめきながら、ベムラーが立ち上がりかけたところへ――
宙マン「くらえ、宙マン・エクシードフラッシュ!!」
ベムラー「は、鼻の穴に湖水が……は、はっ、ハックチョ〜〜!!」
何とも下手な駄洒落とともに、水柱をあげて吹っ飛ぶベムラー。
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「ありがとうです、宙マンさん〜!」
落合さん「これでまた、ウトナイ湖も平和な野鳥の楽園に戻りましたわねっ」
ながもん「(ボソッと)めでたし……めでたし」
ピグモン「はうはう〜、ほんとによかったの〜。
……あれれ、でも、ビーコンちゃんはどこ行っちゃったのかしら〜?」
宙マン「うん? そう言えば……」
「オ〜イ、みんな、こっちこっちっス〜!」
ピグモン「あ〜、ビーコンちゃんったら、あんなとこにいるの〜!」
ビーコン「いや〜、一仕事終えた後は、なんかこう清々しく腹が減ってくるっスよね〜。
てなわけで、ココでみんなで昼飯タイムといくっス〜☆」
落合さん「なぁ〜にが一仕事ですかっ、あなたは何もしてないでしょうっ!(怒)」
みくるん「でも、お腹……すいてきました、よね?」
ながもん「(ボソッと)あいむ……べりー・はんぐりー」
宙マン「はっはっはっはっ、よしよし、分かった分かった。
それじゃビーコンの提案通り、ここらでお昼ごはんにしようじゃないか」
ビーコン「ヒヒヒ、そうこなくっちゃっス〜♪」
野鳥の聖域、美しきウトナイ湖よ……
いつまでも、永遠の平和であれ!

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