今日も今日とて、あくなき地球征服の野望達成と
そのための最大の障害・宙マン打倒に余念のない怪獣軍団。
さて、怪獣魔王によって松戸に送りこまれた次なる使者は!
イフ「ジェロニモン! 大いなる妖魔力の使い手、
怪獣酋長・ジェロニモンよ!
お前の力で、宙マンを地獄に送り込む時はまだか?」
ジェロニモン「もう間もなくでございます、魔王様!」

怪獣魔王の呼びかけに応えて、ぬっと立ち上がったその影は――
その特徴的な容貌と超能力から、「怪獣酋長」と呼ばれて
怪獣仲間からも一目置かれる怪獣界のシャーマンキング、ことジェロニモン。
ジェロニモン「このジェロニモンめの妖魔力によって、地獄の底から
かつて宙マンに倒された怪獣たち・六十匹を一気に蘇らせ、
怪獣大軍団を組織して一斉攻撃をかけるという今回の作戦……
いかな宙マンとは言え、ひとたまりもございますまい!」
イフ「おお、頼もしいぞジェロニモン!
さぁ早く、一刻も早くこのワシのもとへ吉報を届けるのじゃ!」
ジェロニモン「ははっ、では只今!
はぁぁぁ、えんやかやかやか、えんやかやかやか……」

おもむろに槍など持ち出して、何やら不思議な踊りを踊りだすジェロニモン。
ジェロニモン「さぁいでよ、いざ蘇れ、地獄の亡者ども……
怪獣酋長の命のもと、蘇って宙マンに復讐する時は今ぞ!」
ジェロニモン「きぇぇーいっ! あ〜だら、う〜だら、ぱぁぁ〜っ!!」
気合一閃、ジェロニモン!
と同時に、みるみる空がどす黒くかき曇り……。
ピカッ、ゴロゴロドドーンッ!

おお、見よ!
稲妻とともに、その場に姿を現したメタラス、ゼットン、ベムスター、
いずれ劣らぬ強豪揃いの三大怪獣!
ジェロニモン「おお、よくぞ地獄の底より蘇った、再生怪獣どもよ!
これからはこの我輩の下僕として、宙マンへの復讐を……」
……ぷちっ!
「バカヤロー、勝手に殺してんじゃねぇ!!」
どか! ばき! ずが! ばす!
ブチ切れた怪獣たちに、寄ってたかって叩きのめされるジェロニモン。
そう、怪獣酋長はすっかり失念していたのだ――
ノホホンとしたこの「宙マン」ワールドにおいては、たとえどんな悪い怪獣も
全くといっていいほど死んだりしない、ということを。
ベムスター「まったくも〜、つまんないことで俺様ちゃんを呼び出さないでよね!
せっかく楽しく、カウチポテトの真っ最中だったのに……」
ゼットン「大体たかがジェロニモンの分際で、怪獣界屈指の名家の出身たる
この俺をアゴで使おうとはいい度胸じゃないか!」
メタラス「つーか俺、今回が初登場だってーの!
ねー、こんなのってアリ? ねぇアリなわけ!?」

そんなこんなで、怒りに任せてジェロニモンを叩きふせ……
口々にブツブツ言いながら、その場を引き上げていく怪獣たち。
ジェロニモン「ハンニャラ、ヒ〜っ……くそう、こんな筈じゃなかったのに……」
「ねー。おじさん、どうしたのぉ?」

不意に聞こえてきたその声に、ジェロニモンが顔を上げると……
そこにいたのは、偶然その場を通りかかったピグモンだった。
ピグモン「どうしたの? おなか痛いの、それともおなかすいてるの?
ピグちゃんが落合さんを呼んでくるから、ちょっと待っててなの〜」
「うがーっ!!」

なんと逆ギレ、怪獣酋長!
ジェロニモン「えぇい、どいつもこいつも馬鹿にしおって、怪獣酋長を何だと思ってる!
こうなったらイジメてやる、イジメてやる!」
ピグモン「はうう、いや〜んなの〜」
ジェロニモン「ねーい黙れ、ジタバタするな!」
危うしピグモン!
だが、このピンチに颯爽と駆けつけたヒーローは、もちろん……!
宙マン「とぁーっ! 宙マン、参上!」
ピグモン「あっ、宙マンなの〜!」
宙マン「こらっ、ジェロニモン! 例え酋長だろうと、町内会長だろうと……
私の家族をいじめるような真似を、見過ごすような私じゃないぞ!」
ジェロニモン「出たな宙マン! お前など、この我輩の妖魔力の敵ではない!」
ビビビビッ! 眼からおもむろに妖魔力ビームを放つジェロニモン。
宙マン「なんの、宙マン・プロテクション!」
空間湾曲バリヤーでビームを無力化し、すかさず反撃に転じる宙マン。
宙マン「ジェロニモン、悪の栄えた試しはないと知れ!
それ、宙マン・パンチ!」
宙マン「でやぁーっ! 宙マン・大噴火投げ!」
ジェロニモン「ひょええ〜!」
宙マン「とどめだ! 宙マン・ビームフラッシュ!」

必殺光線の直撃を受け、大爆発とともに吹っ飛ぶジェロニモン。
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「あっ、ピグモン、こんなところにいたんスか?」

ビーコン「遊びにいったっきり、なかなか帰ってこないもんだから……
心配ンなって、落合さんと二人で迎えに来たっスよ〜」
落合さん「ふふふっ、何事もなかったようでホッと致しましたわ。
さぁ、帰りましょう――今夜は、ピグモンちゃんの大好物の
「ナスとトマトのチーズ焼き」ですよ」
ピグモン「はうはう〜、ピグちゃん楽しみなの〜♪」
宙マン「はっはっはっはっ」
と言うわけで、いつも通りホンワカムードの宙マンファミリーと……。
ジェロニモン「ハンニャラ、ヒ〜っ……
きょ、今日は厄日だ、間違いない……ガクリッ(気絶)」

……そしてその一方で、ボロクソに叩きのめされた満身創痍のジェロニモン。
明暗のくっきり分かれた、松戸市某所のうららかな午後であった。
怪獣軍団のあくなき攻撃は続く……
これからも松戸を頼んだぞ、我らの宙マン!

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