1973年の東映作品「ロボット刑事」に登場する
「R.R.K.K.バドー」とは、犯罪を犯す人間との「殺人契約」によって
殺人ロボットをレンタルし、これを幇助することによって
そこで得られる利益の半分を報酬として得る・・・という
「刑事ドラマのヒーロー版」を狙って企画された作品にふさわしい
いかにもリアルな手触りの悪の組織でありました。
これら犯罪者に貸し出される犯罪ロボットたちがいかに殺し、いかに奪い、
かつ主人公たちがそのカラクリをいかにして見破っていくか・・・という点で、
毎回のゲスト悪役である犯罪ロボットたちに、物語中においての
比較的大きなウェイトが置かれていた・・・というのは
怪獣・怪人好きとしては素直に嬉しいところであります。
で、そんなバドーロボットたちの中でも一、二を争うお気に入りの1体・・・
第3話「時計発狂事件」に登場する磁力ロボット・ジリキマンについてのお話です。
このジリキマン、その名の通りに「磁石」をモチーフとしたデザインで
その磁力線を武器として犯罪を犯します。
で、そのジリキマンとの間に殺人契約を締結したのが「東情報産業社」の門井社長。
情報産業社というと聞こえはいいですが、その実態は産業スパイの巣窟で・・・
その証拠隠滅のために、要注意人物の口封じと、彼らが新製品の秘密を盗んだ
「オリエント時計工業」そのものの破壊を図った、というわけです。
以下、その辺りの事情を本編のワンシーンから――
フィルムスタート、はい、どンぞ(笑)。
「あなたの組織は、某国の依頼を受けて
オリエント時計の新製品の全データを盗んでいた。
ところが、ガードマンの三宅と大浦の二人に
あなたの部下は捕まった。
あなたはその部下を、密かに毒で殺した――
バドー犯罪組織は、全てを知っています」
「・・・・・・(ただ頷くのみ)」
「そのバドー犯罪組織と手を握れたことは、あなたの幸せです。
この東情報社を怪しいと思っている、三宅と大浦も始末した。
あとは、オリエント工場を破壊します」
「・・・・・お願いする」
(以上、青字はジリキマン、赤字は門井社長の台詞)
・・・うわぁかっこいい(笑・またそれか)!
そう、このジリキマンの磁力線にかかると、時計と言う時計はその機能を乱されて
さながら「発狂した」かのように爆発を起こすわけですよ。
これにより、いかな証拠も残さず爆破工作を行えるという、
まさに時計工場破壊のプロフェッショナル!
更に言うならば、この時のジリキマンが、「大切なお客様」である門井社長に対して
終始敬語で接している、という点も、まさに「契約」の「契約」たる真骨頂という感じで
ビジネスライクなクールさとアダルティなムード横溢、であります。
そう、この「ビジネスライクなクールさ」というのは、バドーロボットを語る上では
絶対に忘れてはならない大きな魅力のひとつで・・・
それによって自分のみならず、時に詩を書き、人間社会の欺瞞に苦悶する
主人公「ロボット刑事・K」の人間臭い魅力をも、その「ロボット像」の対比によって
大いに強調してみせていてくれていた、というわけですよ。クーッ!(笑)
このロボット刑事Kとの対決も、本編中では四度にも渡ってなされ・・・
その中においてジリキマンの「磁力線による殺人・時計破壊」
「両手両足の磁石により鉄を吸いつけ、鉄骨を垂直によじ登り、ぶら下がる」
「頭部の蹄鉄状の角から発射するジリキミサイル」・・・などの武器・能力などが
実に過不足なく、かつ丹念にビジュアル描写されており、
その「強敵っぷり」のアピール度の抜かりなさもまた、そのストレートなデザインと相まって
幼心にジリキマンを強く印象付けてくれた一因だった、と思います。
ビジュアル的に明快な能力と個性、それに劇中でのアピール度の高さ・・・
ウルトラ怪獣や機械獣などと並んで、ジリキマンをはじめとするバドーロボットもまた
マイナーながらも堂々とその存在を誇り得る、素晴らしい悪役たちではないでしょうか。

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