ムギ「私の名前はムギ――サイコキノ星人のムギ、って言います。
「星帝」ユニクロン陛下からは、“冥将”の称号も頂戴してたんですよぉ」

ユニクロン帝国・残党のひとり、“冥将”サイコキノ星人ムギ。
これまでにも幾度となく、宙マンへと刺客を差し向けてきたこの美少女幹部が
遂に、宙マンに対して直接、挑戦状を叩きつけてきた。

持ち前の念動力と怪力で、スクラップ置場に誘い出した宙マンを翻弄するムギ。
そして更には、その念動力によって何の変哲もない段ボール箱を擬似生物化し
“
空箱怪獣・ダンボー”として宙マンを襲わせる!
宙マン「サイコキノ星人、“冥将”ムギ――
どんなに邪悪な企みだろうと、この私が木っ端微塵に打ち砕いてやる!」
ムギ「わぁっ、そうですよね、やっぱりそうこなくっちゃ!
よーし、ダンボーちゃん、遠慮しないで思いっきりやっちゃえ〜☆」

「
グロロロロロ……ッ……!!」
宙マン「さぁ、来いっ!」

激突、宙マン対ダンボー!
廃車の陰からムギがニコニコ見守る中、巨大な両者が戦いの火花を散らす。

一切の感情を感じさせない機械的な動きで、宙マンを攻めるダンボー。
その怪力には、さしもの宙マンも思いのほか手こずらされる。
が、一瞬の隙を突いて大空高くジャンプ!

「グロロロロロ……ッ!」
宙マン「行くぞダンボー、これでもくらえ!」
宙マン「エイヤぁぁぁーっ! 宙マン・ミラクル・キック!!」
バキィィィッ!
おお、何と言うことだろう!?
宙マンが渾身の力で放ったミラクル・キックは、ダンボーの胸板に弾かれる。
元の材質がただの段ボールとは思えぬほどの超硬度は、言うまでもなくムギの
卓越した念動力ゆえの賜物である。
宙マン「くそっ、ならばこれはどうだ!」

全身のエネルギーを凝縮し、エクシードフラッシュを放つ宙マン。
だが、その必殺光線の一閃さえも、ダンボーはやすやすと無力化してみせた!

ミラクルキックでも倒せず! エクシードフラッシュでも倒せず!
宙マンが遭遇した予期せぬ強敵、その名は空箱怪獣ダンボー!
ムギ「よ〜し、それじゃ今度はこっちがお返しする番ですね〜。
ダンボーちゃん、反撃開始よっ!」
「グロロロロロ……ッ!」
シュバッ! シュババババッ!
ダンボーの両目から、周囲に向けて放たれる強烈な破壊閃光!
爆発! また爆発!
その衝撃と高熱に、大きくよろめく宙マン。

ここぞとばかりに、反撃に転じるダンボー。
怪力パンチが唸りをあげて、宙マンのボディに幾度となく叩きつけられる。
その威力たるや、暗黒星雲の強豪怪獣たちに勝るとも劣らない。

容赦ないダンボーの攻めに、防戦一方となる我らのヒーロー。
危うし、宙マン!
宙マン「うぬっ……一体、どうすればヤツを倒せる……!?」
ムギ「うふふっ……いやですねぇ〜、宙マンさんってば。
あなたにはまだ、もう一つとっておきの武器があるじゃないですか〜☆」
宙マン「……何だと!?」
ムギの思いがけない言葉に、困惑する宙マン。

だが、もはや迷っている余裕はない――
宙マンは遂に、銀河伝説の武器・スーパー剣を抜き放った!
「スーパー剣、スーパークラッシュ!!」

渾身の力で振り下ろす、宙マンの必殺剣が炸裂!!
ダンボーのボディを、袈裟がけに鋭く切り裂いた。

ぐらりと崩れ落ち、爆発四散する空箱怪獣ダンボー。
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「サイコキノ星人ムギ……さぁ、今度は君の番だ。
君の口から是非、聞いておきたいことが山ほどあるからな!」

ズシーン、ズシーンと重々しい足音を響かせて……
巨大化したままの宙マンが、ムギの方へとゆっくり歩を進めてくる。
だが、ムギの表情からあの屈託ない笑顔が消えることはない――
ムギ「うふふっ、申し訳ないんですけど……
私もこれで忙しかったりするので、今日のところはおいとましますね〜。
……さぁ、お待たせ、私の「坊や」――
ママの御用は済んだわ、早くおうちに帰りましょう♪」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
宙マン「うおっ!?」

突如、起こった局地的大地震!
凄まじい震動が周囲を激しく揺るがし、宙マンをも怯ませる。
……そして!

山を崩し、大地を引き裂いて、地底からその巨大な姿を見せたのは……
以前のベロクロン・ザ・バースト戦において、一瞬だけその姿を見せて消え去った
謎の巨大超人ではないか!?
「ゴゥゥゥ……ンッ!」
宙マン「……お、お前は……っ!」
ムギ「うふふ、もう顔なじみだとは思いますけど……
一応、改めて宙マンさんにご紹介させて頂きますね」
ムギ「この子の名前は“ダークロプス”!
この私の力と、ユニクロン帝国の悪魔科学がひとつになって生み出された
宇宙最強の悪の戦士……そして、私の可愛い「坊や」で〜す!」
宙マン「悪の戦士……ダークロプス……だと……!?」
ムギ「そう、悪の戦士。
この宇宙の全ての正義を、足元に這いつくばらせる地獄の使者……
うふふ、その日はもうすぐですよ〜☆」
宙マン「おのれ、そうはさせない!」
ダークロプスめがけて、挑みかかっていこうとする宙マンだが……

おもむろに、ダークロプスがその単眼から破壊光線を発射!
その直撃を受け、全身に激しいダメージを負って大きくよろめく宙マン。
ムギ「改めて……今日はご協力ありがとうございました、宙マンさん。
おかげさまでスーパー剣関連の、より納得いくデータが得られそうです――」
ムギ「うちの「坊や」も、これでますます強くなってくれると思うわ。
次に会うときは是非、「坊や」の成長ぶりを体で感じて下さいね?
……宙マンさん、今日のお礼に必ずブチ殺して差し上げますからっ!
ふふふ、くすくす、あはははは……!」

「母親」であるムギを、その巨大な右手の上に乗せたまま……
テレポーテーションで、すーっとその場から幻のように消えていくダークロプス。
そして、その場に一人残された宙マンの中には、全身に受けた傷の痛みとともに
未だ尽きない悪への怒りと、激しい闘志が燃えていた。
宙マン「ううっ、“冥将”ムギ……そして、悪の戦士ダークロプス……
……負けるものか! お前たちなどに、負けてたまるかッ!」

これが、“冥将”ムギと我らが宙マンとの最初の邂逅であった。
北海道千歳市の、人里から離れたごく寂しい場所での出来事であったが……
この場所における戦いが、全宇宙に群雄割拠する様々な「悪」の勢力に対して
与えた衝撃はことのほか大きいものであった。
コオクス「あ、あれです……あの時の超人でございます、創造主様!
あの時、私のベロクロン・ザ・バーストにとどめを刺した者は……」
ヤプール「うぐぐぐっ……よりにもよってサイコキノ星人の小娘だと!?
何がダークロプスだ、お前たちの好きになどさせるものか――
全宇宙の悪を束ね、「星帝」の後継者となるのはこのヤプールなのだ!」
ミラーナイト「フフフフッ、やるではないか“冥将”め……
私の好みとは異なるが、これはこれなりに……美しい」
グレンファイヤー「カカカカ……いいね、いいねぇ、やるじゃねぇかムギちゃん!
まさかこの俺様が、まんまと先ィ越されちまうなんてな――
たまんねぇ、これだからあの娘はたまんねぇ!」
メグリーネ「……だからと言って、このまま黙っているつもりはないんでしょう?」
グレンファイヤー「フン、そりゃお互い様だろ? 姉御ォ」
メグリーネ「(微笑)ふふふふっ……」
宙マン打倒を為し、全宇宙の悪に「帝国の後継者」たる証を立てること。

ユニクロン帝国・残党らを中心として、闇の世界で密かな盛り上がりを見せていた
この陰湿なレースにおいては、まず“冥将”ムギが、そのフットワークの軽さにて
他の誰よりも先んじる格好となった。
その最大の戦力は、悪の巨大戦士“ダークロプス”。

おお、今まさに、この瞬間にも……
ダークロプスには、ムギの手によって更なる宙マンの戦闘データが与えられ
絶え間ない改良強化が施され続けているのだ!
「うふふふっ……
ますます、盛り上がって参りましたぁ〜♪」

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