春の陽気に暖められつつある、ここ千葉県松戸市……
毎度おなじみ、宙マン屋敷。
落合さん「お殿様、お殿様っ!」
落合さん「実は、図書館主催の児童紙芝居を見に行ったっきり
ピグモンちゃんがまだ帰ってこないもので……少々、心配になって参りまして」
宙マン「はっはっはっはっ、落合さんは心配性だなぁ。
あの年頃の子は遊びたい盛りだし、今頃どこかの公園で
友達と一緒に元気よく遊んでるんだと思うけどね?」

ビーコン「そうそう、アニキの言うとおりっス!
腹が減りゃあ、そのうち勝手に帰ってくるっスよ〜」
落合さん「もちろん、普段なら私もそう判断するところですけれど……。
でも今日は、もう間もなくピグモンちゃんが楽しみにしていた
「佐武と市捕物控」の一挙放送があるんですのよ。
あのテレビっ子なピグモンちゃんが、放送開始の時間も忘れて
遊び歩いている、なんてこと……ありえますかしら?」
宙マン「……むぅ、確かにちょっとおかしいな」
……と言うわけで、まだ帰宅の気配がないピグモンを迎えに
図書館へ出向いていったビーコンと落合さん。

ビーコン「ヒヒヒ、いやぁ〜落合さん!
こうしてふたりで並んで歩いてっと、なんかこう
いかにも似合いのカップルみたいじゃないっスか?」
落合さん「よして下さいなッ。縁起でもない!」
などと馬鹿なやりとりを続けながら歩いていると、
ふとその道すがら、ひょっこりと当のピグモンの姿が……。

ビーコン「お、ピグモン、ちょうどいいところにいたっスね!」
落合さん「早くしないと、アニメの一挙放送が始まってしまいますわよ。
ささ、急いでお屋敷に帰りましょうね♪」
そういって、落合さんが手を差し伸べた刹那!
が り っ !
これはどうした事だろう?
不意にピグモンが、その落合さんの右手に思い切り噛み付いてきたではないか!
落合さん「痛ッ!」
ビーコン「おい、ピグモン、ちょっとおいたが過ぎるっスよ!」
ピグモン「はう〜……ササヒラーさま、ばんざ〜い……なの〜」
目を異様なまでに爛々と輝かせ……
うつろな声でうわ言のように呟きながら、落合さんたちに迫ってくるピグモン。
そして、それは単に、ピグモンだけの異変にとどまらず――
「ササヒラーさま、ばんざ〜い……」
「ササヒラーさま、ばんざ〜い……」
ピグモン以外の子どもたちもまた、口々に同様のうわ言を呟きながら
じりっ、じりっと落合さんたちに迫り、包囲の輪を狭めていく。

ビーコン「ど、どひ〜っ、これじゃまるっきりゾンビ映画っスよ!
落合さん、ここは得意のアバレモードで何とかして下さいっス!」
落合さん「む、無茶おっしゃらないで下さい、ビーコンさん!
ビーコンさん相手ならいざ知らず、これから松戸の未来を担っていく
花も実もある松戸っ子相手に、手荒な真似が出来ますかっ」

ビーコン「な、何気に失礼っスね、このオネーチャンは……
……とか言ってる場合じゃないっス! 大ピンチっス〜!!
あ、アニキぃ〜、助けてっス〜!」
宙マン「とうっ! 宙マン、参上!」
落合さん「ああっ、ナイスタイミングです、お殿様♪」
ビーコン「アニキアニキ、早くなんとかして下さいっス!」
宙マン「ようし! 宙マン・催眠返し!」

宙マンの双眸が、カッとまばゆいばかりの閃光を放ち……
そのショックで、催眠状態にあった子どもたちを一気に正気へと戻した!
「あ、あれれ……?」
ピグモン「はう〜……ピグちゃんたち、いったいどうしちゃってたの〜?」
宙マン「ササヒラーとやら、どうせどこかで見ているんだろう!
児童紙芝居と称して、集まった子どもたちに催眠術をかけ……
自らの手先として、自由に操ろうというのがお前のやり口だ!
だが、お前の企みは全て失敗したぞ!」
「うぐぐぐぅ、おのれ、宙マンめ〜!!」

怒りの声とともに、巨大な姿を見せる宇宙怪人・ササヒラー!
ササヒラー「俺がどうにもお前を許せない理由は二つだ、宙マン。
一つは俺の計画を、ものの見事に台無しにしてくれたこと……
そして今ひとつは、この俺が説明するよりも先に
作戦の全貌をぜぇんぶネタバラシしやがったことだ!」
宙マン「出たなササヒラー! 宙マン・ファイト・ゴー!」

すかさず、宙マンも巨大化。
さぁ行け宙マン、ササヒラーをやっつけろ!

手刀の連打で、ササヒラーに反撃する隙を与えない宙マン。
ササヒラー「おのれ、ササヒラー光線を受けてみよ!」

苦し紛れに放ったササヒラー光線も、プロテクションがあっさり無力化。
宙マン「くらえ、宙マン・ビームフラッシュ!」

やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「いやぁ、無事でよかったねぇ、ピグモン♪」
ピグモン「宙マン、どうもありがとうなの〜。
……あ、どうしよう! もう、アニメの一挙放送はじまっちゃってるの〜」
宙マン「はっはっはっはっ、心配いらないよ、ピグモン。
ここへ駆けつける前に、しっかりタイマー録画をセットしてきたからね」
ピグモン「はうはう〜、さっすが宙マンなの〜♪」
落合さん「うふふふっ、これにて本日も一件落着ですわねぇ……って、ええっ?
……きゃ、きゃああああっ!!」
むぎゅううう〜
ビーコン「ヒヒヒ、ササヒラーさま、ばんざ〜い……っス〜!
ほ〜れほれほれ、おっぱい触らせろっス、おっぱい揉ませろっス、
それがイヤならおっぱい吸わせろっス〜!
……
な〜んちゃって。テヘ、っス〜☆」
げ し っ !
……とまぁ、怪獣魔王不在の折にあっても、相も変わらず
何かと騒がしい、宙マンファミリーとその周辺なのであった。
で、その怪獣魔王夫妻はと言えば――
サンドロス「をほほほ、あ〜た……☆」
イフ「ふははは……愛い奴め♪」

……今なお、アキツシマ星系にて長期バカンス中なのであったとさ。
どっとはらい。

0