ウルトラシリーズ史上かつてないほどのハードで辛辣な筋立てや
グロテスクな生理的嫌悪感をデザインの前面に押し出した「ビースト」たち、
更に徹底した連続ドラマとしての展開……といった新機軸を打ち出しつつも
視聴率・商品売り上げの両面で苦戦を強いられ、結果的には放映短縮により
三クールでの終了を余儀なくされた「ウルトラマンネクサス」。
その後番組として企画された「ウルトラマンマックス」は
前作「ネクサス」の“失敗”(と、あえてこう書きます)を踏まえた上で
ウルトラシリーズの原点に返ったシンプルな物語展開と設定、
そして「過去の人気怪獣たちの再登場」を最大の売りのひとつとして設定し、
「主役は怪獣」の精神を高らかに謳いあげる形で放映がスタートしました。
そして、それら「主役」の怪獣たちの中にあって……
「過去の人気怪獣」たちの中から、その先陣を切っていち早く登場したのが
「放電竜」という新たな別名を得てリニューアルされたエレキングでした。

これまでのウルトラシリーズにおける「再登場怪獣」たちの例に漏れず、
「放電竜」エレキングもまた、「初代の造形のイメージと異なる」という
たったそれだけの(そして、それゆえに稚拙な)理由によって
見下げて評価するような手合いが相変わらず存在している、というのは
残念ながら一面の事実ではありますが……
結論から先に申し上げてしまいましょう。
私はこの「放電竜」エレキング、大好きです。
何が良いかと申しますと、まずはその造形アレンジ。
初代エレキングは、故・成田亨氏のデザインと故・高山良策氏の造形という
二大天才のコラボレーションによって生を受けた傑作ウルトラ怪獣であり、
それゆえに今なお高い人気を誇っているのも頷けるところですが……
そういった「色眼鏡」を外して、虚心でこの初代エレキングを鑑賞してみた際に
私が一番気になってしまったのは、ミクラスやウルトラセブンとの格闘時などに
いやが上にも生じてしまう「縫いぐるみの不自然な皺」でした。
40年近く前の「粗い粒子の」フィルム映像においてさえそうだったのですから、
こんにちの高解像度を誇るビデオ撮影において、この「皺」が
どれほどの致命的な「疵」となるか――は、改めてくどくどと申し上げるまでもないでしょう。
そして、「放電竜」エレキングは……
全身のディティールにより生物的な存在感と、筋肉の「うねり」を
造形段階で与えられることによって、初代エレキングの「不自然な皺」という弱点を
見事に克服してみせてくれました。
しかもそれらの皮膚ディティールは、エレキング本来の「白黒マーブル模様」を活かす形で
実に違和感なく、巧みなマッチングを見せながら配置されています――
「安易なデザインアレンジ」どころか、むしろ原点のエレキングに敬意を払った上での
極めて正攻法、かつ誠実な形でのリニューアルであると断言して良いでしょう。
加えて、劇中におけるその「怪獣」としてのキャラクター演出――
独身女性の心を操り、なおかつ体を小型化してその女性の「ペット」として
密かに地球に潜伏・暗躍するその狡猾さ。
都市周辺の電気を吸い取って(それにより、エレキング出現の前兆として
必ず停電が起こる、という前振りの的確さ!)巨大化し、青白い放電スパークを伴って
深夜の大都会に忽然と出現するというある種の「クールさ」……
回転するレーダー角や表情の判然としない顔とも相まって、
「宇宙から来た、まったく異質の生態系を持った怪獣」としての存在感や
「ウルトラ怪獣」の名に恥じない堂々たるカッコ良さ(無機的な大都会に、同じく
無表情に屹立するエレキングのなんと美しく魅力的なことか……あるいは再登場時、
かつてのガラモンばりに複数体が登場、夜の都市を蹂躙していくエレキングたちの
「宇宙人の生体兵器」としてのビジュアル的説得力たるや!)は、
ある意味で初代エレキングのそれを軽々と凌駕していたのではないか……とさえ思えるのです。
デザインアレンジと造形の見事さ、キャラクター演出の的確さ。
この二つの理由をもって、私はこれからも胸を張って、自信をもって
どなたに聞かれてもこう断言したいと思っています――
「
一番好きなエレキングは“放電竜”です」と。

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