
遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。

今日も配下の怪獣たちへと向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの青い地球へ向けて伸びるのだ!
イフ「わははは……もう間もなく、地球はワシら怪獣軍団のものとなるのだ!
破壊と混乱を好む我が配下の前に、地球人は決して勝てはしない――
そしてゾネンゲ博士よ、そのための新たな作戦は進んでおろうな……!?」
「ご心配には及びません、魔王様!」
ゾネンゲ博士「魔王様のお言葉を待つまでもなく、戦士が名乗りを上げ……
秘密兵器を携えて、既に地球へと向かったところでございます」
イフ「おお、それは頼もしいぞ!
今度と言う今度こそ、必ず地球征服の使命を成功させてみせるのだぞ!」
ゾネンゲ博士「ははは、奴めに任せておけば何の問題もございません」
イフ「ううむ、ますますもって楽しみだわい!」

ゾネンゲ博士からの絶大なる信頼を得て、地球へと飛来してきた悪の使者。
果たして今度の敵は、我々の地球にどんな恐怖をもたらすのであろうか?
そして――
厳寒の北海道・千歳市近郊の山中に降り立った者の姿が、コレだ!
「クワッカカァァ〜……ワテクシ、降臨っ!」
一面の銀世界において、あまりにも自己主張の激しい極彩色のボディ。
「サイケ宇宙人」の異名をもつペロリンガ星人のひとり、その名はクルーン。
そう、彼こそ怪獣軍団の一員、
ペロリンガ星人クルーンその人なのだ!
イフ「おお、そなたであったか、ペロリンガ星人クルーン!
して、今度の戦略とはいかなるものか……聞かせてもらってもよいか?」
クルーン「ハ〜イ、ハイハイハイ、魔王チャマっ!
そのご質問をワテクシ、首を長〜くして待っておりましたのコトよっ!」
クルーン「まずはマァご覧になってチョーダイませ、この一面の雪、雪、雪――
毎年この時期になると降り積もる、この雪をど他所にどかせる除雪作業だけで
億単位の予算が吹っ飛んじゃうんだから、自然の力は怖ろしいですワよねぇ」
イフ「その雪がどうしたと言うのだ?」
クルーン「ノンノンノン、慌てない、慌てな〜い。
……その雪自体を武器として使う、それがワテクシの必勝プランってワ・ケ」
イフ「……何と!?」
クルーン「つまり――
雪に埋もれた北海道の山々をピンポイントで爆破して、その衝撃によって
人工的な大雪崩を引き起こそうって言うのがワテクシの狙いなんですのよ」
イフ「おおっ、なるほど!」
クルーン「想像してみて下さいませませ、魔王チャマ――
音を立てて押し寄せる雪の渦が、街も、車も、そしてちっぽけな地球人どもも
全てを呑み込み、押し潰してしまう素晴らしい光景を!」
イフ「ううむっ……何だかワシも今から興奮して来たぞ!」
クルーン「そして大雪崩によって、地球人どもの街が跡形も無く消え去った後に……
ワテクシたち怪獣軍団の前線基地を築き、地球を一気に侵略する、と。
いかが? まさにエキサイティング! でございまショ!?」
イフ「ううむ、素晴らしい!
ペロリンガ星人クルーンよ、何が何でも大雪崩作戦を成功させるのだ!
誰にも気取られることなく秘密裏に、そして確実にコトを運ぶのだぞ!」
クルーン「ウィ・ウィ・ウィー! 勿論ですわよ、魔王チャマ!」
クルーン「ワテクシの開発したエネルギー爆弾さえあれば、容易いコトですわン。
そのエネルギー爆弾については、お話すると長くなるのだけれど……」
「えっ〜っとぉ……
それって、もしかしてコレのことですかぁ〜?」

呑気な声とともに、その場に現れたのは毎度お馴染み・仲良しトリオ……
「宙マンハウス」のピグモンと、みくるん&ながもんのコロポックル姉妹。
そして、みくるんの手の中にある見慣れない物体は――
クルーン「ああ――そうよ、そうそう、これこれっ!
コレこそまさに、ワテクシ特製のエネルギー爆弾なのよっ。
……あの、そこなお子チャマたち、コレを一体どこで?」
ピグモン「んーとね、ピグちゃんたち、みんなで雪遊びしてたらねぇ……」
ながもん「山の、中で……偶然……見つけた」
みくるん「誰かの落し物かと思って、交番へ届けに行くとこだったんですけど。
……よかったぁ、アナタが持ち主だったんですね〜」
クルーン「あ〜ら、あらあら、ご親切にどうも有難う!
今どき珍しい良い子たちねェ、何か美味しいお菓子でもご馳走――」
クルーン「……って、ちっがーう!!(汗)
あらやだわ、どうしましょ、こんなに早くバレちゃうなんて――
ねぇねぇ、どうしましょう、魔王チャマ!」
イフ「決まっておろう、その小娘らを早くひっとらえよ!
大雪崩作戦の秘密を、決して外部に漏らしてはならん!」
クルーン「ウィ・ウィー、かしこまりました、魔王チャマ!
……と言うワケだからゴメンねぇ、あなた達!」
ピグモン「ふぇぇ、こっち来ないでなの〜!(涙目)」
ながもん「これは……いろいろ……大ピンチ?」
みくるん「(涙目)やだ、助けて下さいですぅ!」
クルーン「ダ〜イジョウブ、大人しくしてたら悪いようにはしないから!
大雪崩作戦が完了するまで、ホンの少しの辛抱だから――」
「いいや、それには及ばないぞ!

凛として響き渡った声と共に、その場に颯爽と姿を見せたのは……
もはや説明不要の我らがヒーロー、ご存じ宙マン!
クルーン「オウ! アナタは、アンタは、もしかして――」
宙マン「(頷き)ああ、そうとも、宙マン只今参上だ!」
みくるん「(表情が輝き)宙マンさんっ!」
ピグモン「ふぇぇん、宙マン、ピグちゃんとっても怖かったの〜(泣きベソ)」
宙マン「もう心配ないよ、みんな。この私がついているからね!」
ながもん「おお……何という……安心感」
宙マン「みんなの帰りが少し遅いから、心配になって迎えに来てみれば……
相変わらずろくでもない事ばかり企んでいるな、怪獣軍団!」
クルーン「ムキーッ、失敬な! “素晴らしいコト”って言って頂戴!」
宙マン「どんな言い方をしようが、お前の目的は私が叩き潰してみせるッ。
千歳市民の一人として、大雪崩なんてたまった物じゃないからな――
……それとも作戦の失敗を認めて、いさぎよく暗黒星雲に帰るかね?」
クルーン「ムキムキーッ、ますます失敬な!
アンタはこのワテクシ、ペロリンガ星人クルーンがやっつけてやるわさ!」
宙マン「あくまでやる気か……ならば、やむを得ん!」

激突、宙マン対ペロリンガ星人クルーン!
一面の銀世界を舞台に、宇宙人同士の凄まじい戦いがその幕を開けた。

深く降り積もった雪に、ズボズボと足がめり込んでいくのも構わず……
持ち前のパワーとテクニックを武器に、激しい格闘戦を繰り広げる両者。
そして舞い散る雪煙の中、一瞬の隙を突いて宙マンのキックが炸裂した。
宙マン「どうだペロリンガ星人、正義のキックに怖れをなしたか!」
クルーン「ぐううっ……まだまだ、ワテクシをナメるんじゃないわさ!」

クルーンの両目から、勢いよく迸る“ペロリンガ赤色光線”!
宙マンの側面に炸裂し、大きな爆発の火の手があがる。
クルーン「クワッカカァァ〜! 踊れ踊れ宙マン、もっと踊りんさいっ!」
宙マン「――くッ!」
みくるん「ああっ、このままじゃ宙マンさんが!」
ながもん「これは……反撃の……隙が、ない」
ピグモン「はわわわ、宙マン、がんばってなの〜!(汗)」
クルーン「クワッカカカ、無駄無駄! この雪原が宙マンの墓場になるんだわさ!」
「――それはどうかな!?」

宙マン、気合とともにジャンプ一閃!
ペロリンガ赤色光線の連射を素早くかわして、華麗に大空へと舞い上がる。
クルーン「(驚き)な、何ですとぉっ!?」
宙マン「お前の負けだ、ペロリンガ星人!」

慌てて宙マンに向き直ろうとするクルーンだったが、時すでに遅し。
サイケ宇宙人の胸板めがけて、着地と同時に宙マンの光線技が素早く放たれた!
「くらえ! 宙マン・ウェッジビーム!!」
クルーン「ぐはぁぁぁっ……こ、こんな筈じゃなかったのに〜っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「やったぁ!……やりましたね、宙マンさん!」
ピグモン「はうはう〜、よかったの、宙マンの勝ちだったの〜」
ながもん「寒い中……いつもながらの……グッジョヴ」
宙マン「(頷き)みんなが無事でよかった。……本当によかったよ!」
イフ「うぐぐぐっ! またも、またしてもワシら怪獣軍団の邪魔立てを……
おのれ宙マン、どこまでも憎らしい奴めが〜っ!!」

かくして宙マンの活躍により、ペロリンガ星人クルーンの大雪崩作戦は阻止され
窮地に立ちかけた仲良しトリオも、無事に助け出されたのであった。
みくるん「……って、言うようなことがあったんですぅ〜」
ピグモン「だからピグちゃんたち、無事におうちまで帰ってこられたの〜」
ながもん「それも全て……宙マンの……おかげ」
宙マン「なぁに、それほどでも……はっはっはっはっ」

ビーコン「やー、よかったよかった、ホントよかったっスよ!」
落合さん「全くですわねぇ、皆さん方がご無事で……」
ビーコン「チチチ、確かにそれもあるっスけど……
オイラの言ってる“よかった”は、それとはちょーっと違うんスよね〜」
落合さん「あら、それでは一体何が“よかった”んですの?」
ビーコン「ヒヒヒ、そんなの決まってるじゃないっスか――
今回のお話に、
オイラたちの出番があってよかったってコトっスよ!!」
げ し っ !
落合さん「ねーい、少しは自重なさいませ、このオポンチっ(怒)」
ビーコン「どひ〜っ、だったら暴力沙汰も自重すべきだと思うっスぅぅ〜」
宙マン「はっはっはっはっ」
雪にも負けず、寒さにも負けず……
だから当然、極悪宇宙人にも負けないその勇姿。
我らが宙マン、次回も千歳の平和を頼んだぞ!

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