ジャンボット「受けてみよ! ジャン・キック!!」

新生ユニクロン帝国の誇る鋼鉄の武人、“闘将”ジャンボット。
そして……そのジャンボットが、超科学力と戦闘データを惜しみなくつぎ込み
自らの弟として造りあげた鋼鉄の闘士、ジャンキラー。

恐るべき鋼鉄のジャン兄弟、その邪悪な連携によって宙マンは翻弄され……
そのまま、なすすべもなくジャンキラーの手によって、ファミリーの一員である
友好珍獣・ピグモンを、まんまと連れ去られてしまった!
ジャンキラー「ハハハハ、さらばだ宙マン――
ピグモンとやらは、確かにこの拙者が預かったぞ! ハハハハ……」
宙マン「ま、待て、ジャンキラー! ピグモンを(返せ)――」
ジャンボット「(冷徹に)よそ見をしている暇などあるのか、宙マン!?」

“闘将”ジャンボットの容赦ない一撃、空飛ぶ鋼鉄の破壊拳・ジャンナックルが
猛スピードで宙を舞い、宙マンのボディめがけて炸裂!!
そして、その威力によって――
「う、うわぁぁぁっ……!!」

宙マン一人にダメージを負わせるのみならず、周囲の街までも吹き飛ばす……
恐るべし、ジャンナックル!
落合さん「(言葉を失い)……な……っ!?」
ビーコン「あ……アニキーっ!!」
みくるん「ふぇぇ、ちゅ、宙マンさんがここまで一方的に……」
ながもん「(かぶりを振って)……信じられない」

燃え盛る炎の中から、よろめきながら身を起こす宙マン。
……だが、その眼前からは、既にジャンボットの姿は消え失せていた。
ジャンボット「ワハハハ……今日のところはさらばだ、宙マン!
そなたの家族・有好珍獣ピグモンの身柄、確かに預かったぞ!」
ジャンボット「これからまだまだ、我らジャン兄弟の楽しい趣向が待っておる……
貴様をとことんまで追いつめ、地獄へ叩き落とすための趣向がな。
よいか宙マン、首を洗って待っておれ! ワハハハハ……!」

絶望の中、ジャンボットの哄笑だけが響き渡り……
やがてそれすらも、折からの北風に紛れて遠ざかり、消え去っていく。
宙マン「(呻き)ううううっ……ぴ、ピグモンっ……」

そして、凄まじい猛攻で心身ともにおびただしいダメージを負った宙マンの巨体が
切り倒された巨木のように、ぐらりと大きく揺らいで地面に倒れ伏したのであった。

ビーコン「
……あ、アニキーっ!?」

巨大化が解け、ぐったりとなって倒れ伏した宙マンに駆け寄る仲間たち。
その時、彼の意識は朦朧とし、もはや立ち上がることもままならない状態であった。
みくるん「(涙目)宙マンさん、しっかり、しっかりして下さいですぅ!」
落合さん「お殿様……お殿様っ!」

ビーコン「とっ、とにかく、急いで家に運ばねーとっス!」
ながもん「(頷き)私、お医者さん……呼んでくる」

破壊と混乱、悲鳴と怒号、騒然たるカオスの渦中に晒された千歳市。
ジャン兄弟の「最初の一手」は、見事すぎるほどにその威力を見せ付け……
翻ってそれは、我らが宙マンの完全なる敗退をも意味していた。

そして、夜は更け――
適切な治療が早期になされたことと、プラネット星人の強靭な基礎体力が相まって
ベッドに横たわった宙マンは、ほどなく意識を回復していた。
宙マン「……こうしちゃいられない……行かなくては」
みくるん「だ、駄目ですぅっ、宙マンさん!」
ながもん「その体じゃ、まだ……無理」

回復し切っていない体を叱責するように、もそもそと……
ベッドから身を起こそうとする宙マンを、慌てて押しとどめるコロポックル姉妹。
落合さん「そうですわ、みくるん様たちの仰られる通りです。
その状態で闇雲にピグモンちゃんを探し回って、どうなると言うんです――
せっかく回復されかけたお体の治りが、無駄に長引くだけですわ!」
宙マン「だが……このままじっとしているわけにもいかないじゃないか!
こうしている間にも、ピグモンは……」
落合さん「ええ、判りますとも、私だって同じ気持ちです。
……だからこそ、決して認めるわけにはいかないんです!」
宙マン「(食い下がり)落合さんっ!……」
お互いを思いやるがゆえの、強い調子の言葉の応酬が続く中……
テーブルの上にあった宙マンの携帯電話から、不意にメールの着信音が鳴った。

ビーコン「あ、あの〜、お取込み中のところ悪いんスけど……
なんか、アニキ宛てにメール……届いてるみたいっスよ?」
宙マン「私に?……どれどれ」

ビーコンから自分の携帯電話を受け取り、着信メールを確認。
……その文面に目を通した瞬間、宙マンの表情がサッと緊張をはらんで蒼ざめた。
宙マン「……こ、これは……っ!」
みくるん「ど、どうしたんですか、宙マンさん!?」
落合さん「(ハッとして)ま、まさかお殿様――」
宙マン「(頷き)……ジャン兄弟からだ」
ながもん「……やっぱり……」
宙マン「明日の午前9時半までに指定の場所まで来い、と来たよ。
この呼び出しに応じなければ、ピグモンの命はない……ともね」
ビーコン「や、やっぱ行くんスか? アニキ」
宙マン「ああ、勿論だとも――」
宙マン「そして、そうなるとだ……
明日の朝9時半までに、私がすべきことはひとつ。……落合さん!」
落合さん「(ビクッと体を震わせ)は、ハイッ!」
宙マン「今すぐにとびきり旨い料理を食べさせてくれ、出来れば肉がいいな。
明日に備えて、しっかりエネルギーを蓄えておかなくてはね!」
落合さん「は、はいっ、只今!」

そうして宙マンはその日、落合さんが腕を奮った肉料理をぺろりと平らげ……
もりもり食べた後は、ひたすら朝までぐっすり眠った。
全ては明日、来るべき敵との「取引」に備えて。

そして、払暁――
陽が完全にのぼり切るより前に、宙マンファミリーは出発した。

目指す先は、メールによってジャン兄弟から指定された「取引」場所。
千歳市を遠く離れた道内某所、阿修羅ヶ原と呼ばれる一帯である。

ビーコン「……確か、この辺っスよね。阿修羅ヶ原って」
落合さん「ええ、間違いないはずですわ」
宙マン「ここの何処かに、きっとピグモンが――」

ビーコン「でも……見たとこ、誰も居るようには見えねっスよ!?
言っちゃ悪いスけど……これじゃまるで、ゴーストタウンじゃないっスか」
落合さん「(首を振り)……まるでどころか、そのものですわよ」
宙マン「戦後の高度経済成長時代の落とし子みたいな街だが……
これでも一時期は、石炭採掘の好景気で栄えていたんだそうだよ。
……そんな事より、今はピグモンの安全を確かめるのが第一だ」
ビーコン「おーい、ピグモンやーいっ!」
落合さん「ピグモンちゃーん! いたら返事をして下さいませ!」
宙マン「ピグモン!……ピグモーンっ!」

朽ち果てた廃屋が立ち並ぶ阿修羅ヶ原を、ピグモンを探して歩き回る一同だが
吹きすさぶ風とともに、彼らの呼び声が空しく響き渡るばかり。
宙マン「おかしいな……どこにも見当たらないぞ」

ビーコン「……アニキ、こりゃ奴らに一杯喰わされたんじゃないっスか!?
もしくはアレっス、たちの悪いイタズラだったって可能性も」
宙マン「(首を振り)いや、そんなはずは――」
それらしい姿が一向に見当たらず、焦燥感が一同を支配しかけた時……
周囲に注意深く視線を走らせていた落合さんの表情が、パッと明るく輝いた。
落合さん「(弾んだ声で)み、皆様、見て下さいな! あれ……あれっ!」
ビーコン「(も見て)おおうっ!?」

落合さんの指差した先――
朽ちたガソリン給油装置の影に、確かにピグモンがいた。
宙マン「おおっ、ピグモン! ピグモンじゃないか!!」
ビーコン「よかったよかった、みんな心配してたんスよ!」
落合さん「もう大丈夫ですわ、おうちに帰りましょう!」

満面の喜びを顕にし、ピグモンに駆け寄っていく宙マンたちであったが……
そんな彼らに対し、何故かピグモンはじりじりと怯えたように後ずさる。
ピグモン「こ……来ないでなのっ!!」
落合さん「え……ええっ!?」
宙マン「な……何を言ってるんだ、ピグモン!?」
ビーコン「迎えに来たんスよ、早くこっち来るっス!」
ピグモン「ダメなの……ピグちゃん、もう……ダメなのぉっ」
宙マン「ダメって、何が――」
ピグモン「もう、ダ……メ……みんな……逃、げ、てぇぇっ……」
「グ、グ、グギギギギィ……っ!!」
落合さん「ああっ――」
宙マン「(我が目を疑い)な、何……ッ!?」

おお、見よ! 驚愕せよ!
宙マンたちの目の前で、異様な閃光を放ってピグモンの小さな体が膨れあがり
みるみるうちに、天を衝くサイズの巨大怪獣へと変貌を遂げたではないか!?

ビーコン「ど、どひ〜っ……マジっスか、コレ!?(汗)」
落合さん「そんな……そんな、まさか、ピグモンちゃんが!」
「グルルル……グギギギィーッ!!」
宙マン「(歯噛みして)むう……っ!」
まさか!? 巨獣と化したピグモン。
更に、ジャン兄弟の打つ次なる一手とは?
そして、我らが宙マンは如何に戦い抜くか!?

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