
4月をすぐ間近に控え、大地を覆っていた雪も急速に溶け去って行き……
ここ・北海道にも、いよいよ本格的な春が訪れつつあった。

北海道千歳市の一角・ほんわか町5丁目も、うららかな春の陽気と心地よい春風に
ほんのりと暖められ、のどかな平和の中にある。

そんな和やかムードの中で幕を開ける、今回の『宙マン』。
毎度お馴染み、「宙マンハウス」の庭先から物語を始めることにしよう。
みくるん「こんにちはぁ〜、宙マンさん!」
ながもん「(ボソッと)御機嫌……うるわしゅう」
宙マン「やぁ、こんにちは、二人とも!」
落合さん「いつまでも冬だと思っておりましたら、もうすっかり春ですわねぇ〜」
みくるん「はいっ、毎日ポカポカですぅ!」
ピグモン「あんまりあったかいから、ピグちゃんさっきまでお昼寝してたの〜」
ながもん「(頷き)春眠……暁を……覚えず」
ビーコン「でも、そうやって一日ゴロゴロ、ダラダラしてても……
カラダの方はよく出来てるもんで、しっかりハラは減るんスよねぇ〜」
みくるん「そうそう、今日はそのことで寄ってみたんですよ。
ねぇ、皆さんも一緒に、ラーメン食べに行きません?」
落合さん「ラーメン……ですか?」
宙マン「うん、確かに私たちも大好物ではあるけれど……
ビーコン「だけど、あんまり「春」ってイメージじゃないっスよねぇ〜」
ながもん「チチチ……そう、思うのが……素人の、あさはかさ」
みくるん「そこのお店の春季限定メニューはですねェ、春の山菜たっぷりなんですよ〜。
アイヌネギとか、フキノトウの天ぷらとか……」
ながもん「(頷き)いま、この時期にしか……食べられない」
宙マン「おおっ、それを聞いては行かないわけにはいかんねぇ!」
ピグモン「はうはう〜、とっても美味しそうなの〜♪」

ビーコン「よーし、決まりっスね!
そんじゃ今からみんなで、その春季限定ラーメンとやらを食いに突撃っス!」
落合さん「それでは少々お待ち下さいね、すぐに仕度を致しますから……」
だが、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
みくるん「きゃ、きゃああああっ!」
落合さん「じ、地震ですの!?」
ビーコン「どひ〜っ、こりゃデカイっスよ、只事じゃないっス!(汗)」

突如、平和の中にあった千歳の街を襲った局地的大地震。
ビルを陥没させ、大地を引き裂き……
そして、地中よりもうもうと立ち昇る赤い煙の中から姿を現したのは!?
「びゃわわわぁ〜んっ!!」
みくるん「ふぇぇん、出てきたです、怪獣ですぅ〜!(涙)」
ながもん「違う。……あの、現れ方は……間違いなく……」
ピグモン「(目をぱちくり)ちょ、超獣……なの〜!?」
ながもん「……(こっくり頷く)」
「びゃわわぁぁ〜んっ、俺の名前は液汁超獣・ハンザギラン!
千歳を地獄に変えるため、はるばる異次元空間からやって来たぜェ!」
<宙マン「ううむっ、今回は「異次元超獣軍」の差し金か……!」

異次元人の邪悪な科学技術で生み出された生体兵器であるテリブル・モンスター、
通称“超獣”たちの軍団である「異次元超獣軍」。
彼らは新生ユニクロン帝国から離反した元“妖将”メグリーネと、怪僧マザロンを
組織の頂点に置き、今も虎視眈々と地球を狙っているのであった。

ビーコン「ここんとこ鳴りを潜めてたのに、今んなってノコノコ出てくるなんて……」
落合さん「一体どういう風の吹き回しですの?」
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、理由もリクツもいらねぇぜ!
暴れたいから暴れる、ただそれだけだぜぇ!」
ビーコン「……うっわ、開き直りやがったっス!(汗)」
みくるん「そう言われちゃうと、私たちぐうの音も出ないですぅ〜」
ハンザギラン「お喋りは終わりだ、俺の力を見せてやるぜぇ!」
宙マン「……むむっ!?」

邪悪な宣言とともに、進撃開始するハンザギラン!
平和な街はたちまち大パニックに陥り、悲鳴をあげながら人々が逃げ惑う。

そんなハンザギランの武器は、口から吐き出す溶解液!
ご覧の通り、浴びたものを何でもたちどころに溶かしてしまう威力である。

だが、そんなハンザギランの猛攻を阻むべく……
防衛隊の千歳基地から、直ちに最新鋭の戦闘機編隊が発進した。

ハンザギランめがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、「半裂き」の別称で知られる山椒魚の、驚異的な生命力を受け継いでいる
ハンザギランの前には、それらの攻撃も全くと言ってよいほど通用しない。
「う、うわぁぁぁっ……!!」

上空の戦闘機めがけて、溶解液を吐きかけるハンザギラン!
近代科学技術の粋たる戦闘機も、この恐るべき液体を浴びてはひとたまりもない。
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、暴れるのってチョー気持ちいいぜぇ!」

ビーコン「どひ〜っ、アイツ、あんなこと言ってるっスよぉ!」
みくるん「このままじゃ、ラーメン屋さんどころか千歳の街がなくなっちゃいますぅ〜(泣)」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るハンザギランの前へ敢然と立ちはだかる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
超獣ハンザギランよ、悪さはやめて大人しく異次元空間に帰るがいい!」
ズ、ズーンっ!!

ビーコン「いよっしゃ、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、お殿様、やっぱり素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう〜、宙マン、がんばってなの〜!」
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、てめぇこそ引っ込んでろ、宙マン!
俺の「遊びの」邪魔をすんな……だぜぇ!」
宙マン「自分の楽しみのためならば、他人の苦しみを顧みないその所業。
だが、千歳に宙マンがいる限り、そんな無法は通らないと知れ!」
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、ホザくなだぜ!」
宙マン「さぁ、来いっ!!」

激突、宙マン対ハンザギラン!
人々が固唾を呑んで見守る中、凄まじい攻防戦がその火花を散らす。

巨体に秘められた猛パワーに物を言わせ、角をふりかざしての突進!
頭突き戦法の衝撃に、宙マンもズズッと後退を余儀なくされるが……
またまだヒーローの闘志は衰えず、果敢にハンザギランへと挑んでいく。

ハンザギランとの距離を一気に詰め、火の出るようなパンチ、チョップ!
更に肘打ちまでもを、速攻で次から次へと超獣めがけて炸裂させる宙マン。

最も怖ろしい溶解液を吐き出す隙を与えまいと、攻めに攻めまくる宙マン。
執拗に叩きのめされながら、しかしハンザギランは……
じっと耐えつつ、溶解液をお見舞いするチャンスをじっと待ち続けていた。
宙マン「えい、やぁっ!……参ったか、これでもか!」
ハンザギラン「宙マン! ナメんなよだぜ――びゃわわぁぁ〜んっ!」

双方の間合いが離れた一瞬の隙を逃さず……
ついに自身の奥の手、魔の溶解液を吐き出して反撃するハンザギラン!
そして宙マンは、恐るべき液汁をまともに全身へ浴びてしまったではないか!?
ピグモン「(目を見開き)ちゅ、宙マンっ!?」

ビーコン「ヤバいっスよ、これじゃアニキまでさっきのビルみたいに……!」
落合さん「(祈るように)お殿様……お殿様っ!」
宙マン「(苦悶)ぐ……うう、う……っ!」
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、苦しいかぁ?
……苦しいはずだぜ、宙マンちゃ〜ん!(ニヤニヤ)」
みくるん「ひどいっ、苦しんでる宙マンさんに追い打ちなんて!」
ながもん「さすが、超獣……根性悪」
ハンザギラン「びゃわわぁぁ〜んっ、何とでもほざけだぜェ!
さぁ、宙マン、影も形もなくなっちまえだぜ!」

宙マンにとどめを刺すべく、猛然と突進してくるハンザギラン!
だが、宙マンも、苦しみながらよろりと立ち上がり……
「ぬうぅぅぅ……トゥアーッ!!」

宙マン、気力を振り絞ってパワー全開!
気合一閃、全身にまとわりつく溶解液を吹っ飛ばしてしまう。
ハンザギラン「(驚き)げ、ゲゲーッ!?」
宙マン「ハンザギランよ、悪の栄えた試しはないぞ!」
「くらえ! 宙マン・ウェッジビーム!!」
ハンザギラン「さ、山椒魚は……悲しんだぁぁ〜っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「やったぁ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「さっすが……安心と、信頼の……宙マン」
ピグモン「はうはう〜、宙マン、ありがとうなの〜☆」

人々の歓声が、宙マンの雄姿とその勝利を讃える。
だが、そんな明るい声の中……
宙マンの巨体を忌々しげに見つめている、ひとつの邪悪な視線があった。
「うぬぬぬ……宙マンめ、よくもハンザギランを!
だが、勝った気になるのはまだ早いぞ――
本当の勝負は、ここからだ!!」

等身大のサイズから、みるみるうちに巨大化する視線の主。
彼もまた、「異次元超獣軍」から送りこまれてきたエージェントの一人……
先ほどのハンザギランを指揮していたのも、他でもないこの男だったのだ。
ピグモン「はわわ、また何か出てきたの〜!(汗)」

ビーコン「ひぇぇ、間髪入れずに新手っスかぁ!?」
ながもん「連戦は……かなり……厳しい、かも」
みくるん「ふぇぇ、宙マンさん、どうなっちゃうんですかぁ!?」
落合さん「大丈夫ですとも……お殿様が、負けたりするものですか!」
「デュハハハハ……私の名は地底超人・アングラモン!
「異次元超獣軍」の使者にして、超獣たちを指揮する幹部のひとり……
さぁ宙マン、今度はこの私が相手にやってやる!」
宙マン「……むむっ!」
一難去って、また一難!
地鳴りとともに現れた、地底超人アングラモン。
どうする宙マン、どうなる宙マン!?

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