2010/1/17

かいじゅうたちのいるところ  映画
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幼い少年が、不思議なかいじゅうたちの住む島で繰り広げる冒険ファンタジー。
例えばそう思い込んでこの映画を見ると、多分見事に肩透かしを食らう。この肩透かしによって、この映画は、単純に「理解しがたい映画」と評価されてしまう惧れすらある。なので、敢えて、ネタバレを書く。もしこの映画を「明快な冒険ファンタジー」として見ようと考えていた人は、是非、このネタバレを読んでから映画館に行って欲しい。もちろん「この映画をそんな風には考えてなかった」という人は、鑑賞後にお読みくださいw。

主人公のマックスは9歳。幼年期と思春期のはざまにいる。
何も考えなくても暖かだった世界の微細な歪みを感じはじめて、日々落ち着かない。理由もなく激昂する気持ちを押さえられず、飼い犬を執拗に追い掛け回してみたり、最近遊びの相手をしてくれなくなった姉やその友達にいきなり雪合戦を仕掛け、手ひどい反撃をくらって、大泣きする。もちろん悔しさ半分、甘え半分の大泣き。しかし、それでも彼を無視、黙って友達と出かけてしまう姉の部屋に行って、自分が姉にあげたプレゼントをメチャクチャに壊すマックス。マックスが感じている、平凡だが切実な孤独や焦燥の描き方が見事。手持ちカメラによるシャープな撮影と巧みな編集が、マックスの心理を的確に表現していく。離婚し、いわゆるキャリアウーマンとしてマックスと姉二人の子供を抱えるママはなんとか子供たちと向かい合おうとする努力は惜しまない「いい母親」だが、日々の疲れから、マックスの「多動ぶり」に時折ついていけなくなり、ある夜、ついに爆発。マックスは家を飛び出して夜の住宅街を走り出す。追いかけるママ。
よくあるパターンとしては、ここでマックスが車にはねられるなど、なんらかの「事件」をキッカケに、ファンタジーパートに移行したりするのだが、そういった普通の展開は一切ない。
走るマックスは唐突に、木立のむこうに海を見る。木立を抜けた岸辺にはちいさなボートが停泊している。マックスはそれに乗って、海原に漕ぎ出す。そして、荒れる海を越えて、ちいさな島に到着する。リアルとファンタジーの境目は全くない。これがマックスの「夢」なのか「現実」なのかは一切説明されない。まるで、「幼年期の精神の運動」そのもののように、映画は展開する。

島に到着したマックスは、なにやら大騒ぎしているかいじゅうたちを目撃する。
バカでかいキャロルが、家を壊している。仲間たちはなすすべもなくそれを見ている。
その豪快な破壊っぷりに共感したマックスはキャロルといっしょに家を壊し始める。
かいじゅうたちはあっけにとられ、訝しげにマックスに歩み寄り、「お前はだれだ」と問い詰める。
「食うぞ!」
「そんなことできるわけないよ!僕は王様だ!だから食べられない!」
驚くかいじゅうたち。
「ぼくはなんでも出来るんだ!」
「・・・ひとりぼっちなのも救えるのか」キャロルが尋ねる。
「できるとも!」
たったこれだけの「説得」と「納得」によってマックスはこの島の「王様」になる。
さてそのあと、いったい何が起きるのか?
王様マックスは、この不思議な島に隠された秘密を暴き、
かいじゅうたちを脅かす敵を打ち倒し、世界を救うのか?
いや、実は「なにも起きない」。
映画はただ、そこに棲むかいじゅう同士の「かいじゅう関係」を淡々と語る。
マックスとかいじゅうたちの交流を淡々と描く。
そう、ここは確かに異世界だが、本来のマックスの世界の写し絵に「すぎない」のだ。
もっとも気難しく乱暴だが一番やさしくもあり仲良しのキャロルは、明らかにマックス自身だし、キャロルが常に愛憎半ばで接する女かいじゅうのKWは多分、姉、もしくはママだ。

確かに、最初はとても愉しかったこのかいじゅうの世界。
かいじゅうたちと転げまわって跳ね回って遊んで、みんなで重なって眠った(このシーケンス、最高!)。でも、この満ち足りて暖かい世界は、あっけなく歪みはじめてしまう。
なぜなのか。
ぼくはほんとうに、みんなと愉しく暮らしたい、と思っているだけなのに。
ぼくは王様で、この世界を支配しているはずなのに。
悩んだ王様マックスは「戦争ごっこ」を計画する。
敵味方に分かれて、泥ダンゴをぶつけ合うのだ(冒頭の雪合戦のメタファー)。
きっと愉しくて、またみんな仲良くなれる!!
・・・・でも結果は、まるで逆だった。
戦争ごっこは、精神的にも肉体的にも、みんなを傷つけてしまったのだ。
あるかいじゅうが言う。
「きみはほんとうは王様なんかじゃないだろう?」
「うん」告白するマックス。「ぼくは普通のこどもだ」
「最初からわかっていたよ。でもキャロルにこのことは言うな」
しかし、キャロルはこの真実を知ってしまう。
激怒するキャロル。「このうそつきめ!食ってやる!!」
でも、お互いにほんとうは大好きだと知っているマックスとキャロル。
そしてマックスは決める。「ぼくは帰るよ」
島の岸辺から船に乗るマックスを見送るかいじゅうたちの中にキャロルの姿はない。
船が何十メートルも岸を離れた時、キャロルが走ってくる。
しかし、すでにお互いが触れ合える距離ではない。
体の半分を水に浸したキャロルは黙ってマックスの船を見つめる(このシーン、ほんとに素晴らしい)。こうして、マックスはもうひとりの自分に別れを告げる。

多分、マックスがかいじゅうの島で学んだのは、世界にはうまくいかないことは確かにあって、でもそれは受け入れるしかない、というとても切ない真実だけだ。それでもぼくは、この世界を好きでいよう。
ほんの少しだけ「成長してしまった」マックスは、いつの間にか船を降り、
ふたたび夜の住宅街を走っていく。家に飛び込む。
ママが待っていた。多分、長い時間。ママは黙ってマックスを抱きしめる。
そして、食べ物をほおばる空腹のマックスを、ママは黙って見つめる。
そのやさしく微笑む表情で、映画は終わる。

間違いなく映画史上に残るクオリティの「キグルミ特撮」を使って、極めてナイーブな「ホームドラマ」を完成させたスパイク・ジョーンズに拍手。すべてがCGによるポストプロダクションだと言う
かいじゅうたちの表情は驚異的で、彼らはほんとうにこの映画の中で生きている。撮影、美術、編集、音楽、どれも実に素晴らしい。というか、
こういう意欲的な作品を作ろうとしてほんとうに作リきった事自体が、なによりも素晴らしい。
「アバター」なんか、どうでもいいw。こういう映画がヒットせな。
福田はもう一度見ます(^-^)/

☆☆☆☆

2010/1/29  9:27

投稿者:爆じゅん
興業成績3位ですもんね、私も嬉しい驚きですたw
ダグラスの枝のとこ・・・うちの相方も「腕が枝になってるよっ!w」って、反応してましたww (そうぢゃなかったら、私はうっかり見逃すところだったかも・・・(^^;)
ちなみに・・・原作の絵本、読んで見ました〜
かいじゅうたち、まんま、ほんと絵本から抜け出て来たみたいですね!
でもって、よくぞここからあんなにもいろいろ膨らませてくれたものだと感心〜〜〜
「お別れ」のシーンが原作とは大きく違うけど、映画と絵本、同じ感情が湧いてくるのも感心〜〜
オトナになっちゃった私には、残念ながら子供の頃ほどの感受性は無くなっちゃってるんで、映画で見れて良かった☆

2010/1/28  22:34

投稿者:fukuda
>>ほぼ満席
>>ジワジワと口コミで話題になってきてる

っていうのは意外だなあ。なんか重い映画だからどんどん客が減るかと思ってたんですが。なんにせよ、こういう欝っぽい映画にまだお客が来るっていうのはちょっと救いかな。何だかんだ言ってこの映画、心に余裕がないと辛いでしょ。
ダグラスの枝はけっこうキツいけど、とりあえず、見たことない表現でビックリしましたw。

2010/1/28  20:57

投稿者:加藤礼次朗ですが。
昨日やっと観てきました。新宿ピカデリー夜9時の回。ほぼ満席。もちろん客は全員大人。なんだかジワジワと口コミで話題になってきてる感じ?がします。たしかにこの映画、客が客を呼んでだんだん評価が上がっていくタイプの典型ですよね。でも人気に火がついた頃に上映期間が終わってしまうのがロードショーの寂しいところ。でもこの映画、家でビデオで観るタイプの作品じゃない。誰かと観たいね。いや、最初は一人で観て、そのあと大事な人ともう一度映画館へ行くのがいい。そのあたり昔はそこら中に二番館があって、二番館の人気プログラムっていうのがありましたけれど、まさにこの映画なんかそうなりそうな感じ。でもいま二番館ないし。その辺ほんといまの映画環境って味気ないね。私的には鳥さんの怪獣が羽根ぶっちぎられて、そのあとでぞんざいに木の棒突っ込まれてたところがお気に入り。

2010/1/25  9:02

投稿者:爆じゅん
ネタバレ部分、やっと読めましたw
私はこういうの好きなんで、ノれましたよ〜☆ てか、すっかり入り込んだww
語りすぎない繊細な感じが、映画なのに絵本的だな〜って思いますた☆
オトナになってから見ててもじゅうぶん「来る」けど、これ、ビンゴの年頃の子が見たら、切実な分、もっと「来る」だろうな・・・と。(もしかして映画館で号泣してないか?)

私的には、数年に一度くらい思いだしてふっとまた見たくなるタイプの映画かなぁ〜☆
余韻のせいか、原作はとっても短い絵本だってことだけど、そこからここまでどういう風に持ってきたのか、そういう意味も含めて原作も読んでみたいな、って思いまする。

2010/1/19  17:51

投稿者:うろ
>「きみたちにもママがいたらなあ・・・」

やられた!そうでした。
うーん、深いなぁ…。

2010/1/19  17:26

投稿者:fukuda
ほんと、ジム・ヘンソンスタジオは凄いっすね。見るたびに愕然とさせられることが多いです。今回も、キグルミでもこれだけ「見たことない感」が出せるんだなあと。まあ、福田としては、フランク・オズとのタッグ作品「リトルショップオブホラーズ」のオードリーUが未だに一番好きですがw。

>>胎内回帰願望

って程ではないにせよ、少なくとも「女性の体内に隠れ場所がある」=男の子(人)を最終的に救ってくれるのは女の子(人)っていう感覚があるのは確かですよねw。最終的にこの映画、マックスがかいじゅうたちに言う「きみたちにもママがいたらなあ・・・」という台詞がある意味「全て」だし。

2010/1/19  15:54

投稿者:うろ
昨日見て来ました。

さすがのジムヘンソンスタジオ、いい仕事してますねぇ。

【ネタバレ】キャロル(暴走する自我)に追っかけられたマックスが助けられるのはKWの口の中ってのは、男の子の持つ胎内回帰願望なんですかね。(ベタですけど)

2010/1/18  19:14

投稿者:まりまり@携帯
かいじゅう…は、絵本を持っていたので、なかなか忠実にかいじゅうを再現してそうだなぁ〜と思っていた位で…ww


あっ、そうそう
余計なお世話ですが、ww
一応書いときますね。川崎ラゾーナの109アイマックスは、午前11時の一回だけの上映ですので、お気をつけてww

2010/1/18  16:54

投稿者:爆じゅん
>ボディブローみたいな映画
あ・・。私にもあります。
永瀬くんとともさかりえが主演の「クロエ」っていう作品。
いわゆる難病(奇病?)を材料にしたラブストリーなんですけど、
これが、下手すると退屈と隣り合わせくらい静かで、強く感情が揺さぶれることもなくゆるゆる物語は過ぎて行くし、
どこがいい!とか言えないのに、なんでか忘れられないっていうか、思い返せば「好き」になっちゃってる映画で・・・。
「だんだん浸みる」とはちょっと違うんで、福田さんにとっての「かいじゅうたちのいるところ」とは違うかもしれないですけどね・・・。
ちなみに、この映画・・・
単に、切ないでもなく暖かいでもない不思議な空気感が私にはいいんだとは思うけど、
そのせいで、そもそも良い映画なのかどうかも判別できてない気がするんですよねぇ・・・w
今ちょっと調べてみたら、いくらか映画祭等で賞とかも貰ってるみたいだけど、多分ヒットはしてなさそうな感じが(^^;
この作品、福田さんは見られてるかな、見られてないかな、どんな感想持たれるんだろうな、って、気になる映画のひとつだったりします・・・w


それはそうと・・・
>3Dで光量が落ちないのはアイマックスだけ!
およw そうなんですかww
光量不足は現段階ではどうにもならないんだって思ってた!w
そうか・・・。なら、いずれアイマックスで見ねば・・・。

>キャメロン映画って直球すぎて
わはw 我が家での共通の感想のひとつが、「分かりやすい映画だったよねw」ですたww
ちなみに、福田さんがわざわざ映画を見たいが為だけに一番遠くへ行かれた場所ってどこでしょう。

2010/1/18  12:00

投稿者:fukuda
>>どういう心持ちで見始めるか

ほんとは、そんなある種の「覚悟」に影響されてしまうような映画は、あんまりホメられたもんじゃないんだよねw。実際、福田はこの映画、結構ウロ噛んだ、っていうか、見終わった直後は自分の中でどう処理していいか悩んだ。はっきりいって、「すげー、面白い!」とも「文句なくいい!」とも全く思わなかったから。でも、なんだか知らないけど、見終わって時間が経つほど、どんどん浸みてきた。たまにあるんだよ、そういうボディブローみたいな映画が。
でもまあ、そんな映画は、「当たらない」よねw、間違いなく。

だから今回書いたレビューは、「カールじいさん」の時と違って、(まあ読んでもらえれば分かるとおもうけど)ものすごく個人的で感傷的な感覚に基づいてる。ロジックではなく。なので、これを読んで見に言っても全然ノれなかった、ってことになる可能性は大w。そこのところは誤解のなきよう。

「アバター」は、CGの鹿角さんに、「見るんだったら川崎のアイマックスシアターしかないですよ!3Dで光量が落ちないのはアイマックスだけ!」と言われちゃったので、妙にスレッショルドが高くなってる。ものすげえええええ見たいのなら、川崎でもどこでも行くけど、そうでもないしね・・・・なにより、リアルCGキャラがリアルCG世界で活躍するっていう世界観自体にあんまり惹かれないのと、俺、基本、キャメロン映画って直球すぎてどうもダメなんだよなー。根本的にシナリオがバカでしょ。それでもほとんど全部の作品を見てるっていうのが、キャメロン映画のメジャーっぷりって事なんけどw。

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