2010/6/13

佐々木誠監督 ロングインタビュー 再開 2!  インタビュー
MS はい。2001年当時、僕は渋谷のクラブとニューヨークのクラブを双方向映像でつなぐ指輪ホテルの「Long Distance Love」というイベントに関わっていて。その初日が9/14だったので、9/11は渋谷のクラブでリハーサルをやってたんです。そしたら、弟から突然電話がかかってきて「ニューヨークが大変なことになってるぞ!」って言う。何のことか全然わからないまま回線をつないでいたら、ニューヨークサイドはパニックになってて。渋谷に集まっているスタッフは呆然としてその様子を見ていた。僕はその時、これは生まれて初めてかも知れない、というほどはっきりした自分の意志で、呆然としているスタッフにビデオカメラを向けたんですよ。自分の目線でこの状況を記録しなくちゃ、と初めて思った。

YF まさに、意志とスキルが一致した瞬間だね。その瞬間を体験できたことは凄いことだと思う。明らかにそれが初期衝動となって「Fragment」に繋がったよね。

MS そうですね。最初、井上実直をメインに映画を撮ろうと思ったときに、このクラブでの衝動がそのまま生きていたかどうかは、そんなにはっきりはしてないんですが・・・当初は単に、友人だった井上実直から、100日大荒行っていうのに行くからその記録を撮ってほしいと頼まれたんです。なんでそんなキツそうなものに参加するの?って尋ねたら、それはニューヨークでグラウンドゼロに行ったことがキッカケだったと。

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それで、彼を軸に「9.11」の断片(フラグメント)を撮ろう、と思って撮り始めました。けっこう軽い気持ちというか、そんな感じで撮り始めたんですが、2002年に撮影を開始した後、実直がどんどん変って行った。どんどん「僧侶」になっていったんです。それで映画もどんどん変っていった。実直は、完成したものがこういう映画になるとは思っていなかったようですけど。

YF 「Fragment」は2002年に撮り始めて・・・

MS 2005年まで撮ってました。足掛け4年ですね。

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YF すごい持続力だね。その持続力こそが明らかにこの映画に説得力を与えてて。実直くんが僧侶になっていく・・宗教者になっていくリアリティがすごい。俺がこの映画がドキュメンタリーとして優れてると思うのは、佐々木誠と言う監督が4年もの長い時間の間、最初から最後までシンプルな記録者であり続けてること。徹底して観察者でしかないこと。自然現象をそのまま撮ってるみたいなスタンスを崩さないこと。カメラを回してるのも佐々木くん本人なんだから、映画が「こっち側」に翻るのは凄く簡単なんだよね。でもそれをやってない。ナレーションも入れない。音楽も一切使わない。そしてそれは「作為の隠蔽」という猛烈な作為で、もっとも意思的な作家的選択だと。

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だから、俺としては、この作品に対して「作者の意志が見えない」って言う人は、根本的に見誤ってると思う。逆だよね。語らないことそのものが意志でしょ、この映画は。でも、最初に言ったとおり、カメラが投げかけてる視線はちゃんとエンタテインメントの視線なんだよ。編集のスピード感もね。とてもユニークだよ。この映画が「ドキュメンタリー」としてちゃんと評価されてないっていうのは悲しいね。

MS 正直、あらゆるドキュメンタリー映画祭で全く評価してもらえなかった時は、もう映像と関わるのはやめようか、と思いました。でもその後、すこしずつ、理解してくださる人が増えてきて、アップリンクファクトリーでは1年以上ロングラン上映できたり、と、なんとなくホッとしています。まあ、相変わらずいわゆる「ドキュメンタリー界」からは完全黙殺され続けてますけど(笑)。

YF いいよ、そんもんほっとけば(笑)だいたい、「なんとか界」なんてものにロクなもんはないんだから。「ロック界」だって、「王様」が出てきたときすげえ批判して黙殺しようとしたんだよ。俺は王道やってるのに、あいつはなんだ、みたいな。あんなに「ロック」な男いないのに、外面しか見ない。困ったもんだ。まあさすがに今、「王様」を批判するヤツなんかいないだろうけどね。実際、当時「王様」批判してたヤツらって、もうほとんど音楽止めてる。あー、話脱線した。元にもどしましょう。この作品の、ある意味対極にあるのが、短編「マイノリティとセックスに関する2,3の事例」。俺は最初にこっちを見たでしょ、で、このタイトルを見て、あ、こいつフランスなのかと(笑)ゴダール野郎かと(笑)

MS(笑)確かに20歳頃はゴダールやアントニオーニにもハマりましたけど。
あ、あと、いきなりですが、当時、井口昇監督の自主映画「わびしゃび」には感動しました!

YF あれはほんと名作だね〜。大林宣彦監督なんか、この映画は世界映画史上の事件だってまで言ってる(笑)。それは大袈裟にせよ、あんなにストレートに心を打つ映画はほんとに少ない。今の時点で見て感動するんだから、世代の近い佐々木さんとかがほぼリアルタイムで見たのなら、そりゃあやられるよね。やられる、をキーワードに強引に話を元にもどすけど、この「マイノリティとセックスに関する2,3の事例」って、ホント、だまされたんだけど、フェイクドキュメンタリーなんだよね?

MS そうです。

YF そう言われればそうか、と思うけど、作り方がうまいよね。やられた。ダマされた。でも、あのモンマさん、という人はホンモノでしょ。

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MS ホンモノです。でも彼女はニセモノ。

YF ダマされた〜!彼の存在感とリアリティが凄いから、全部が本当に思える。

MS そうなんですよ。僕はこれで、ドキュメンタリーなのかそうじゃないのか、みたいな、「ジャンル」という考え方そのものへの懐疑というか、そういう感情を表現したかったんです。真実と虚構の境目なんて、実は誰にも分からないでしょ、みたいな。

YF そこに写っている人間はホンモノだけど、それははたして「取材対象」なのかそれとも「役者」なのか。でもほんとはそんなことはどうでもよくて。この作品で言えば、「身障者の人のセックスライフ」や「映画作家のナンパの先にあるもの」が語りかけてくるなんとも言えない奇妙な「世界のリアリティ」が重要なんだよね。

MS そうですね。僕は基本的に人に興味があって、とにかく人にカメラを向けたい。ドキュメンタリーであるか、ないか、は問題じゃない。今は、実質的に「マイノリティとセックスに関する2,3の事例」の続編を作っています。

YF 期待してます!

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2010/6/14  0:12

投稿者:同じ苗字デス
DVD買います!!
「Fragment」すっごく観たいもの(>_<)
「語らないことそのものが意志」であり、そのことが伝わってくるドキュメンタリー映画は・・・絶対観たい☆

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