2009/3/24

佐々木誠 ロングインタビュー01  インタビュー
3/16。前回の氏へのインタビューからちょうど一ヵ月後。2月末から3月初旬にかけてアメリカ ロサンゼルスの南カリフォルニア大学の招きで「Fragment(フラグメント)」の上映とティーチインを行った佐々木誠氏(以下、MS)と再会。

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いわゆるインタビュー記事の構造としては極めて異例だが、「Fragment(フラグメント)」という作品の内容、佐々木氏の履歴などを語る前に、まずは現状、この作品そのものが「いま」置かれている状況そのもの、についてのインタビューを掲載したい。
そのため、佐々木氏に関するさまざまな来歴や出来事が「既知のもの」として会話が行われている場合が多い。あきらかに不明と思われる部分については最低限の注釈を補すが、詳細に関しては今後の「遡って」のインタビューで補完していただければ幸いである。

3/16

YF:おかえりなさい。どうでしたか、アメリカでの「Fragment」への反応は。

MS:とてもよかったです・・と言うか、自分が想像していた以上に正確に見てもらえたし、深いところまで見てもらえたっていう感じがありますね。

YF:それは素晴らしい。今回の招聘はそもそもどんな経緯で決まったんですか?

MS:USC(南カリフォルニア大学)で日本文化論を教えているローリー・ミークスという教授・・・ものすごい美人の教授なんですが(笑)、彼女がたまたま渋谷のアップリンク(註:「Fragment」の上映館)で「Fragment」を見てくれたのがキッカケです。

YF:なるほど、日本文化論を教えてる人だったら反応するよね、この作品には。上映は教室とかで?

MS:いえ、USCにはすごい映画館がありまして、そこで。

YF:映画館があるの!?大学の中に?

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USC構内にある映画館の正面玄関。

MS:そうなんですよ。スピルバーグとかそのへんの大物映画人の寄付で作られたらしいんですが(福田註:かつてスピルバーグはUSC志望だったが、学業成績が芳しくなく入学できなかった)、ほんとうに立派な劇場でびっくりしました。でも、「Fragment」の上映の日が、アカデミー賞授賞式の日だったんですよ。

YF:うわあ、そりゃキツい(笑)

MS:(笑)ですよね。これは絶対お客さんなんか来てくれないだろう、ガラガラだろうと思っていたら、なんと300席が全部埋まって満員でした。

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YF:すごい!そりゃあ嬉しかったでしょう。客層はどんなでした?やっぱり白人が多かった?

MS:いえ、東洋系、ヒスパニック系、白人、黒人・・・人種入り乱れてました。黒人の数は多くなかったですが。

YF:理想的な状態じゃないですか・・・福田は、アカデミー賞授賞式って、なんだかんだ言ってもやっぱり「所詮は白人のお祭り」って感じがしてるんで、映画のイベントとしては明らかにアカデミー賞に勝った感じ?(笑)観客の反応は具体的にはどうでした?ここは明らかに日本とは違うな、みたいな部分は。

MS;そうですね、僕が意図的に笑いを取ろうと思って入れた部分にすごくストレートに反応してくれていたのが嬉しかったですね。例えば、井上実直が100日荒行に入る前に、食べ収めみたいにいろんなケーキをパクパク食べまくっているシーンとか、ニューヨークで僧衣を着た実直くんと井田さん(註:「Fragment」で井上実直氏とともにグランドゼロで祈祷を行う僧侶)が、「パフォーマンスと間違われないないだろうな」とブツブツいいながら歩いている姿なんかが素直にウケてました。

YF:上映後のトークも盛り上がりましたか。

MS:映画学科の教授や、宗教学の教授たちとトークして、とても深い話になりました。映画学の教授が、「Fragment」というタイトルはつまり、さまざまな断片を集めて世界を再生していくという意味なんだね、と言ってくれて、これは僕にとってはいい意味で予想外の表現で、なるほどそういう捉え方もあるんだな、と。ただ、会話はあくまで通訳を介しているので、思っていることを全部は話しきれなかったし、多分、教授のみなさんの話も通訳のかたが全部は訳しきれていなかったと思います。

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YF:でしょうねえ。で、この上映会のあと、さらにオファーがあった、と。

MS:ええ、USCでの上映を見てくれたカルフォルニア大学の教授の招きで、後日、カリフォルニア大のサンタバーバラ校とリバーサイド校の2校で、2007年制作の短編の「マイノリティとセックスに関する2、3の事例」を上映しました。この時は、それぞれ50人ぐらいずつに見てもらいました。この時のリバーサイド校の教授は、もう日本語ペラペラなんですが、彼はこの映画の素晴らしい理解者でした。「きみの映画は、ハイパーテキストだね」と言ってもらえたのが凄く嬉しかったですね。

YF:ハイパーテキスト。

MS:ええ、つまり、作品のどの部分からもなんらかのテキストが取り出せる、どのシーンにも問題提起がある、ということらしいです。これは嬉しかった。

YF:素晴らしい褒め言葉だねー。的確に佐々木誠作品の本質を突いてるって言うか。
例えば「Fragment」って、作品の中心に描いている対象、要するにそれは「井上実直」という人物なんだけど、彼に対して、徹底的に客観的だもんね。常に一定の距離を置いて、その距離感が最後の最後まで変わらない。その客観性、クールさにおいて、とても正確に、「客観的に」意味が切り出しやすいんだよね・・・これが、ガァっと主観的になっちゃうと、その瞬間にテキストも変容して、問題の中心点がブレる。異質なものが出てくる。

MS:でも、熱いっていうか、そういう部分がなさすぎる、ってよく言われるんですよ。だからなのか、この作品、いわゆる「ドキュメンタリー映画」界からは完全に無視されています。

YF:え?本当に?

MS:はい、いわゆる黙殺、に近い状態ですね。結局のところ、この映画でおまえは何が言いたいんだ、と、よく言われます。

YF:要するに、なにも結論が出てないじゃないか、って事?うーん、それは困ったなあ。この映画、音楽もナレーションも一切入れずに、ただ淡々と事実だけを追っていって、最終的にはいわゆる「結論」を何も出さない。見た人に全部をゆだねちゃう。それこそがこの映画のドキュメンタリーとしての面白さだし、誠実さだと思うんだけど。

MS:そういう風に見てくれる人とそうでない人が真っ二つ、ですね(笑)。例えば、いわゆる映画関係の人には、評論家含め、結構否定的に言われる事が多くて。逆に、デザイン系とか、福田さんみたいに音楽系のかたからは、評価していただくことが多いんです。
僕自身は、この作品を撮るまで、いわゆる「ドキュメンタリー映画」というものを作ろうと思った事は一度もなくて、一番好きな映画は実は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」なんですが(註:佐々木氏の映画作家としての志向性に関しては、別のインタビューを後日掲載する)、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」って徹底的に主人公マーティに関して客観的なんです。実はマーティのクローズアップが一度もないとか、異色のハリウッド映画なんですね。マーティは常に「誰か」「何か」に影響を受けて物語がすすんで行くし、そもそも「主人公の心理」が描かれない。あのテンポに影響受けているのかなぁと勝手に思いました。つまり、「ドキュメンタリー映画」を作っているのに、エンタティンメントの王道みたいな映画から影響を受けてる、というあたりが、いわゆる「ドキュメンタリー」のカテゴリーからはじかれてしまう一因なのかなあと。

YF:うーん、どうだろう。この作品が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の影響下にある、っていうのは、多分、作者にしか分からないことなんじゃないかなあ・・少なくとも、福田としては、前回佐々木さんから、いままで見てきた映画の履歴とか好きな映画についてのお話を聞くまでは思いもしなかったことだったし。むしろ、テーマの設定の仕方とか、そういう事で引っかかってるのかも。例えば、今まで、映画評論家とかに、仏教の坊さんをアメリカに連れてく、っていうテーマ設定がそもそも安易だ、とか言われたことない?

MS(笑)ありますねー。結構、そういうノリはあります。

YF:やっぱりなあ・・・なんだか、絶望的になるね。「アメリカに坊さん」で何が悪いんだろうなあ。問題は、そこから何を語ろうとするか、その意思であってね。日本人って、方法論にかまけて本質を見失うっていうか、方法論の評価が先で、その先は知らん、みたいな事を言っちゃう傾向がある。福田は、そうじゃねえだろう、と思うんだよね。アメリカ人のほうがストレートに物事を見る部分が明らかにあって、「Fragment」に関しては、そういう見方をしないと見えてこないものがたくさんある。そういう意味では、日本でよりアメリカを含め、海外でのほうが、「正しく」評価してもらえるかも知れないね。今後は、アメリカでの更なる展開、みたいなことは考えてるんですか?

MS:まだ特に具体的な話はないんですが、今後もこの作品を持って海外に行くことはあると思うので、とりあえず今は、英語をもっとちゃんと勉強しておくかと。やっぱり、通訳ごしだ限界がありますからね。

つづく




2009/3/24  23:00

投稿者:爆じゅん
見てないから、実際にはなにも言えないんだけど・・・

>「アメリカに坊さん」で何が悪いんだろうなあ。
ですねぇ。
切り口が斬新、方法が新しい、とかって評価されやすいけど、”それだけ”で終わるものもあるし・・・

続きのインタビューも楽しみにしてまする☆

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