2005/12/29

この瞬間の音色  ラブフルート

12月になると流れていく時間の速さをとりわけ強く感じます。
つい先日のホワイトクリスマス・コンサートがあっという間に遠くへ行ってしまいました。天候が激しく変化する冬の動きが印象的でした。ガラスのピラミッドに叩きつける雪と風が今まで見たことのない独特の模様を描いて人々を包み込んでいました。今年で3度目のコンサートでしたが、ピラミッドの空間が随分と小さく、狭く感じました。たくさんの方々が多忙なクリスマス・イブの夜に足を運んでくださっておられる姿が音色を生み出してくれたように思います。一年ごとに来場者が増えているな..と思います。毎年楽しみにやってきてくださる方もおられました。とても嬉しいことです。そして、私も継続して聞いてくださる方の事を思い起こして、新しい音の流れを聴いていただきたいと思い新曲を用意していました。

 今回は「おやすみ」と「コヨーテ・トリック」という曲を新曲として用意していたのですが..こういうお話が、さして興味がなくなっていくのだろうな..と感じます。今年が終わり、新しい年が始まる。そのことを中心に動き出していますから..そして新年もまた、同じように過ぎ去って行くことでしょう。

 瞬間瞬間の印象を残しながら、次々と新しい流れが生まれてくる..これは音楽という現象そのものといっても良いかもしれません。生まれる前から、そして生まれた時も、その後の人生も時は同じ速さで流れてきました。

 やがて、それぞれの人生は、あたかも一つの曲のように始まり、終わりを迎えることになるでしょう。自分ではのんびりしているつもりでも、時計の針は淡々と、そして忠実に動いて行きます。すーっと融けて行く雪は美しく個性的な結晶の集まりですが、はらはらと舞っている時間はわずかです。美しい音色もまた、輝きながら瞬間から瞬間へと移り変わって行きます。

 先に生まれた音色に心を奪われてしまえば、今現在の音色に心を傾けることは出来ません。同時に、これから奏でる(待ち受けている)音色を気にすれば、やはり今の音色がないがしろになります。

 こうした音色の性質を通して、音楽が持っているメッセージに気付くことが出来るかもしれません。つまり、今と言う瞬間に心を集中することで、過ぎ去った音色も、これから待ちうけている音色にも心を繋ぐことが出来るということです。

 これはラウンドレッスンの時に大切にしていることの一つです。自分の息が注ぎ込まれて音色が生まれているということ。それを全身で感じ取ることが出来れば、過去も未来も意識からはなくなるでしょう。瞬間の音色に集中している状態から学ぶことは重要ですが、これは勿論頭で分かることではありません。むしろ、吹いて行くうちに気付くことなのだと思います。

 ああやって、こうやって、これもしたし、あれもした。こういう意識があると当然今の瞬間に心を注ぐ状態が失われてしまいます。どんなに美しい音色も、楽しい音色も、重厚な音色も、過ぎ去ってから、ああだった、こうだったと持ち出してくれば、今の瞬間の大切さを見失った音色を奏でることになるでしょう。心の思いは、過ぎ去った自分へのこだわりという音色になるのです。
 
 或いは、先に待っている音符へのこだわりが大きければ、今の瞬間は先に行くための、単なる通過点になってしまうでしょう。これまた、その音色に心が伴っていない状態になるのです。

 これは、生きて営まれるあらゆる事柄に当てはめてみることが出来るでしょう。愛するということは勿論ですが、その瞬間に心を注ぐことによって生まれてくるのは、感謝と喜びと安らぎ三兄弟です。

 このことに気付きますと、瞬く間に過ぎ去る時間の中にいても、今という時ををじっくりと味わうことが出来るようになっていくように思います。

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