1月4日は、鎌倉鶴岡八幡宮の釿始め(ちょうなはじめ)です。
これから、釿始めに用いるご神木を、二の鳥居まで運ぶところでした。
いったん二の鳥居まで運ばれたご神木は、工匠たちに担がれて段葛(だんかずら)、三の鳥居を通って釿始めの式場まで運ばれます。
もちろん、こうゆう時には鳶職の木遣り(きやり)は欠かせません。
朗々と響く木遣りに先導されて、ご神木が静々と進むさまは絵になる風景・・・だったはず。
誠に残念ながら、そこまでは見れなかったんだけどね。
はっきりいって、見るんだったら釿始めの神事よりも、こちらのほうが見栄えがすると思うよ。
この後は儀式っぽくなっちゃうからね。
釿というのは手斧とも書くことがある大工道具。
手斧と書いちゃうと、いわゆる斧・・・ハンドアックス(hand axe)のほうを思い浮かべる人が多いと思う。
ところが釿と斧では、刃の付き方が90度違っているんだ。
斧が軸にそって刃が付いているのに対して、釿のほうは軸に対して直行して刃が付いてる。
感じとしては斧のほうはナイフを、釿のほうは農機具の鍬(くわ)を思い浮かべてもらうといいと思う。
この釿はどのようなときに用いる道具なのかというと、材木の表面を削りとるときに用いられてたんだ。
釿を手前に振るって、材木の表面をこつこつと削りとってたんだね。
ただ、この作業はかなり危険。
材木を削らずに自分の足を削っちゃうことが、よくあったみたいだよ。
ちなみに、このように叩くようにして削る作業のことを、専門用語では斫る(はつる)といいます。
釿と斫、両方とも斤旁り(おのづくり)を持つ漢字で、さらにその作業を行う匠(たくみ)のほうにも斤が入ってました。
この釿、今ではその役割りを電動工具に取って代わられて、ほとんど使われることがなくなった大工道具。
ただ、使われなくなってから、数百年も経っているというわけじゃなくて、かなり年配の大工さんなら使ったことがある程度の古さ。
つまり、その大工さんたちが若かりし頃には、釿というのは現役の大工道具だったわけ。
現役の大工道具の名前を冠した、その頃の釿始めというのは、今とは違ったふうに感じられてたんじゃないかな・・・などと感じた次第です。

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