2006/3/2

『埋められた鏡:副題、スペイン系アメリカの文化と歴史』  お勧めの1冊

カルロス・フェンテス著、中央公論社。1995年初版 ここでの「鏡」とはメキシコ革命で反乱を起こした民衆が押し入った富豪の家の中で、はじめて自分の姿を「鏡」で見て、『自分自身とは誰なのか』を問うシーンに象徴される。 著者は、『…我々はインディオ、黒人、ヨーロッパ人だが、何よりも混血の、メスティーソである』と言う。p416  またこうも述べる『…エンチラーダはハンバーガーと共存出来ると考えているからである。文化は他者との接触によってのみ栄え、孤立すれば滅びる』p414 

メキシコ人である著者は国連や外務省にも勤めた人物。彼はラテン・アメリカ世界の歴史を、まずローマのイベリア半島支配から紐解く。彼は、スペイン系アメリカの文化と歴史は、遠くローマのイベリア半島の支配の、そしてさらにはレコンキスタの流れの延長にあることを力説する。 レコンキスタが何よりも軍事的な出来事であるとしながらも、スペインと後のスペイン系アメリカの輪郭を形作ったとし、その中には元々政教分離という建前があるにも関わらず軍隊には多くの僧侶が混じり後に新世界の征服を大きく決定づけた戦闘的な宗教軍の雛形が見いだされたと。p66 この指摘はサンチェス・アルボルノスが70年前に『スペインとイスラム;あるヨーロッパ中世』で述べた通り。

著者によれば、スペイン語の単語の1/4はアラビア語を語源としているとか。p57  しばしば我々は「スペインはヨーロッパだ」と思い込んでいるが800年もの間、イスラームの支配を受けたイベリア半島の歴史を再度認識する必要がありそう。

図らずもこの本の最後にも『アメリカ合衆国のヒスパニック』という章がとってある。以前、この欄で紹介したようにフランスの西欧中・近世史家である E・トッドが『移民の運命』という本を書き、アメリカの政治学者で『文明の衝突』の著者、S・ハンチントンが『分断されるアメリカ』という本を書いているが両者とも20世紀の、さらに21世紀の最大の課題の1つがこの移民の問題であることを指摘している。 今回の著者が最後の章に『アメリカ合衆国のヒスパニック』という項を設けたのも同じ理由からでしょう。しかし前2者とその答えは微妙に異なるよう。
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