私が浪人時代から大学卒業までの間 バイトをしていた。
住所は代々木二丁目だが 新宿駅南口といっていいだろう
その喫茶店の名前は
ダフネ
あれは、昭和54年の3月だった、大学入試で受験した大学全部落ちた私は、名門Yゼミナールに入学した。
この頃の住まいは 京王線沿線の上北沢にアパートを借りた、共同トイレ、共同炊事場の6畳一間だった。テレビもお風呂もない生活である。
浪人生ですから〜
そんな時 高校時代のブラバンの先輩から夏ごろにもらったマッチが目に入った、そしてそのときにその先輩から
「てんちゃん(違うけど)東京に出てきたらここにおいで、おれがバイトしてるから」
喫茶DAPHNEダフネ?変な名前だけど行ってみるか・・・予備校の授業はまだ始まっていない。
初めての一人暮らしに
糸の切れた凧状態の私は、新宿に向かった。
18歳の春だった・・
新宿駅南口を出て甲州街道をルミネ方面に、
「でかい交差点だな〜人もいっぱいいるぞ」
左に折れ 30mくらいのところに
くら〜い雰囲気の喫茶店があった、それまでの私は喫茶店なんかほとんど入ったことが無い、といってもその頃 横浜のある喫茶店に通っていたのだが
わくわくドキドキしながら、ドアを引いた
暇な店でお客さんはほとんどいない、バイトが二人椅子に座って話している、男と女だ・・席に座るとその女性が水を持ってきた
「いらっしゃいませ・・ご注文はなににしますか?」
「えっと〜ウインナー珈琲ありますか?」
私としては ひたすら 田舎青年であることを隠すためのオーダーだ
すると店員
「すいませんウインナーやってないんですけど」
私は困った 後知ってるのは 珈琲と紅茶だけだ・・当たり前の注文をしたら田舎もんに見られる。。どうしよう
そうだ・・私は思い切って切り出した
オレンジシュースください
オーダーを終えて ホッとした・・めがねの男がカウンターに入り、氷を砕く様子を横目で見ながら・・・
(守さん(ブラバンの先輩)のことをいつ聞こうか・・・どうしよう・・)
オレンジジュースが来た、ゴブレットがオレンジ色に輝いて見えた(当たり前か)
緊張で喉がカラカラの私はストローを差し込むのと同時に
ちゅ〜〜〜〜っとほぼ一気に飲んでしまった。
(やばい・・・田舎もんと思われる・・いや 変質者に見えるかも)
喉の渇きがいえたら今度はなんか食べたくなった
ここには何があるんだろう メニューもない・・二人のバイトはまた椅子に座って喋っている
「あの〜すいません 何か食べるものありますか?」
見事なまでの標準語で私は声を掛けた・・調子が出てきた 元来 おしゃべりな私は黙っているほうが苦痛なのである。
女性が来た、「サンドイッチとトーストと〜」
「あああのサンドイッチ・・サンドイッチは何がありますか?」
「はい、ハムサンドとタマゴサンドがあります」
「・・・・え・・あ・・りょ・・両方ください」
この真意は、サンドイッチなんてものは腹にたまる物ではない、どんぶりめし以外はおやつだ・・と思っていたからである。
ダメだここで田舎もんであることがばれてしまったか
「あの〜ミックスサンドでよろしいですか?」と女性は笑顔で言った
僕にとってはこの笑顔は 馬鹿にした笑顔に見えた。
「あ・・はい・・それでお願いします」
伝票を持ってオーダーを通しに行った・・メガネの男がまたカウンターに入っていった、なにやらパンを切っているようだ、そこで私は飲み物がないことに気がついた、さっきのオレンジシュースなんて氷まで食べてしまっていた。
「あの〜紅茶もください」もはや羞恥心はなくなっていた。
ついでに切り出そう・・・今がチャンスだ・・時間がたつと口が渇いて喋れなくなる 私は口を開いた
「あの〜すいません」(いろいろ言って来る客だと思われたに違いない他の客(数人)は珈琲を飲みながら新聞を黙って読んでいる)
「は〜い」女性が明るく答えてくれた
「あの〜すいません、こちらにM.マモルさんて人バイトしてませんか?」
「いません」なんて言われたらどうしよう
すると「はい・・いますよ・・今日は出番じゃありませんが」
そして女性はカウンターのメガネの男になにやら話しかけている
するとその男がカウンターから笑顔で
「お客さん マモルは僕の弟ですが、連絡取りましょうか?」
へ〜〜〜やった〜お兄さんだったのか〜だったら話は早い
男:「ところでお客さん 弟の友達ですか?」
私:「あ・・はい高校の二級下の後輩です。」
男:「後輩?あれ・・大学の同級生かと思いました」
(え・・おれってそんなにふけてる?)
男:「マモルは今家にいると思うから電話で呼びましょうか?」
私:「いえ・・けっこうです てんちゃん(違うけど)が来たって伝えてください」
そういってサンドイッチをたいらげお店を後にした。なぜ帰りを急いだかというと
実はこの日もう一つ新宿に来た目的があったのだ、それは歌舞伎町にある
N・R・P三本立ての現代社会の問題点を描いた映画を見に行くことだった・・・なにせ若いですから
(バイト始める、そしてマスターとの出会い)につづく
マークのところがダフネだ


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