5月20日現在でこれまでのCovid19による死亡者は3831人。
死亡者の数ばかりに焦点をあてて語るのはよくない、という人もいる。でも、亡くなった方の家族にとっては、その人はもういないし、代わりはいないのだ。もしかして政策が異なれば(たとえばノルウェーのように)助かった命だったとしたら…と考えるのはつらい。
前回はスウェーデンのゆるいコロナ事情をわりと肯定的に書いたけれど、その後ある日ニュースを聞いていて怒りが爆発、それ以来日本の友人からスウェーデンについて好意的な感想が聞こえてきても返事ができない。
そのニュースというのはストックホルム近郊の高齢者の介護施設に関する調査の結果で、227か所の施設の責任者がアンケートに回答した。高齢者の施設で感染が広がるというのはヨーロッパ各国で起こっている現象だが、スウェーデンでの感染と死亡は4月になっても5月になっても収まる気配がない。お年寄りを感染から守ることを緊急の課題にしてかなり厳しい隔離政策をとっていたはずで、家族でも面会できなくなっているというのになぜ?と不審に思っていたし、うすうす想像もしていたが、やっぱりその通りだった。
施設の責任者たちいわく「今は人手不足のために人材派遣会社経由の時間給の職員が多く、彼らは衛生に関する知識に欠けている。」「語学の問題もあり、理解力に欠ける。」「時給を失いたくなくて感染していても仕事に来ていたケースがある」「人手不足のために感染していても夜勤などをせざるをえなかったケースがある」
ちょっと待って!!
お年寄りの施設で感染が見つかり、お年寄りを危険から守るために優先順位を上位においていたんじゃなかったっけ?それなのにどうして職員を「無知のまま」ほっぽらかしてきたのか。どうしてもっと人材を確保しないで自覚症状のある職員に夜勤をさせたりしたのか。予算が足りないなら国に出してもらえばいいのではないのか。語学の問題があるならなおさら彼らを感染から守るために必要最低限の研修と訓練を行うべきではないのか???
日本で看護婦をしている友人から聞いた話によると、感染者との接し方にはものすごく複雑で細かい技術が必要で、防護服を身に着ける訓練も何度も行わなければこなせないものだという。いっぽうスウェーデンの介護施設の彼らは仕事の前に一体どんな訓練を受けただろう?だいたいマスクだって支給されていない人が多いのだ。
<追記 これを読んだ友人から「日本の医療施設とスウェーデンの介護施設を比較する意味はないのでは?」と言われたので補足すると、どちらも感染の危険性の高い施設の職員であることには変わりがないから比較したくなっただけで国を比較するつもりはない。片方は職員に情報がしっかりと伝達され、仕事をするために必要な装備と訓練が与えられていた。そしてもう片方は??ということだ。スウェーデンも病院に関しては日本と同様なのだろうと思っている。>
これらの施設の介護の仕事がもともと体力的にきつくて給料の低い3K仕事だというのは今更いうまでもなく、だから時間給で安く雇われた移民がたくさん働いているというのも周知の事実だ。それを5月になってから突然起こった不幸な出来事であるかのように、雇われた方に問題があるかのごとく、しゃあしゃあと?? 国の管轄ではないことはわかっているが、そういうチェック機能はないのだろうか??
さすがにこれはまずいと地方自治体レベルでこれらの施設の職員に対する待遇の改善や研修の機会などをもりこんだ改革が行われることになりそうだというニュースも読んだ。とにかく動き始めてよかった。遅いけどそれでもマシだ。

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