2007/9/17
先週私のいとこが仕事でデンマークにやってくることになり、スウェーデンにも遊びに来るというので、「どこか遠出するのもいいね」とあれこれ考えていたときに候補にあがった場所のひとつがNimisというところである。
ニミスというのはマルモから車で一時間半ほど北上したところにある自然保護地区の海岸に立っている廃材で組み立てられたオブジェの名前だが、その海岸一帯を指してそう呼ぶことが多い。変わり者の芸術家ラース・ヴィルクスという人が自力でこの廃材を運んできてこれを作ったのだが、「自然保護区にこんなものを建ててはいけない」とするお役所との間で何年も激しいバトルが繰り広げられているうちになぜかニミスは有名になり(ヴィルクスはニミスの海岸に「ラドニア共和国」という国名をつけ、パスポートまで発行していたことがあったそうで相棒はこのパスポートを持っている。)ヨーロッパ中から旅行者が訪れるようになった。私も何度か行ったことがあるがとてもいいところだ。
「ニミス」は10メートル以上の高さで人が上れるようになっており、いつも子供たちが大喜びして登っている。ほかにもおもしろい形をしたオブジェがある。この海岸は公道からはまったく見えず、しばらく丘をのぼりおりしていると突然海とオブジェが目にとびこんでくる。眺めもいいし、ハイキングコースとしてもおすすめだ。
しかし...「ニミスには当分近寄れない」という事態が起こってしまった。
ニミスを作ったラース・ヴィルクスがこの8月に犬にモハメッドの顔を貼り付けた「作品」を発表したことがアル・カイダの怒りにふれ、先週の土曜日にアル・カイダが「彼を殺した者に10万ドルの報奨金をかける」と発表したのである。「あーニミスなんかには行けない...」ニミスのオブジェが爆破されたり放火されたりする危険性は十分ある。
今朝の新聞を見たら彼は「あなたのモハメッド犬は不必要に挑発的ではないか」と聞かれ、「いや、西洋の価値観に立とうとしたらこうするしかないのだ。」みたいなことを答えていた。彼のいうところの「西洋の価値観」というのは「宗教が政治を支配するような価値観」と相反するもののことであるらしい。
アル・カイダはエリクソンやIKEA、H&Mなどのスウェーデン企業の海外支社もテロの標的になりうると言っているらしい。おととしデンマークが被ったような商品ボイコットが行われる可能性もあるだろう。
おととしのユランド・ポステン事件でモハメッドの「諷刺画」を発表したひとたちやデンマークがどういう目にあったか知っていてあえてモハメッドの犬を作ったこの人、「表現の自由」をまじめに訴えたかったのだとしたら相当間抜けだが、目立ちたいだけだったとしたらそれに関しては成功している。彼の顔は今日一日で飽きるほど見た。
私がスウェーデンで働いて払っている税金がこのひとの警護のために使われているのかと思うとちょっとバカバカしくなる。それにしてもニミスの件ではおかみのお尋ね者だった彼が警察の護衛をばっちりつけられることになったのが笑える。彼、警察に守ってもらってどんな気持ちなんだろう。
追記:スウェーデンのムスリム団体はアル・カイダに対して強い抗議を表明している。

0
コメントは新しいものから表示されます。
コメント本文中とURL欄にURLを記入すると、自動的にリンクされます。