私の相方の話によると、彼の母親はチョコレート中毒だったという。初めは冗談だろうと思って笑って聞いていたが、あたりに何もないサマーハウスでチョコレート禁断症状に襲われ、ひとりで自転車にまたがり往復四時間かけてチョコレートを買いに行った、という逸話を聞いてそれが冗談というわけでもないことがわかった。
実は彼女は若い頃Mazettiというマルメのチョコレート工場で働いていたことがある。中毒になったのはたぶんそのせいだろう。

これがその工場…だったところ。チョコレート工場は閉鎖された後マルメのコミューンが空き家のまま所有していたが、3年ほど前に十代の若者をターゲットにした音楽や演劇活動の場として生まれ変わった。
マセッティのロゴタイプだったぎょろ目印の門。
このロゴはマセッティを買収したフィンランドのFazerに受け継がれている。うちのココアやベーキングパウダーにもぎょろ目印がついている。
Fazerのチョコレート。フィンランド語とスウェーデン語の二国語表記。(Fazerの製品でなくても二ヶ国語表記はよくある)
この「マセッティ カルチャーハウス」の一角に小さいチョコレート屋もできた。このお店のチョコレート職人さんはマセッティとは関係ないのだが、店には昔のマセッティ製品(スミレの飴の箱やココアの缶など)が並んでいてまるでMazetti博物館のよう。このアメを子供のときにしゃぶったりココアを飲んだりした思い出のある人は多く、ここを訪れてなつかしむおじおばが多いという。
プラリネやトリュフが並ぶ。リコリシュ味やホットワイン味(またですか)などもあるのでご興味のある方はお試しを。
昔風の引き出し(左右は昔の砂糖会社の木箱)に並んでいるのは「ホットチョコレート用チョコ棒」。二年ほど前にデンマークのチョコレート屋で初めて見た。ただの棒つきのチョコだと思ったのだが、店員さんがほかのお客に説明しているのを聞いて熱い牛乳(またはカフェ・ラテ)をカップにそそいでこれでかき混ぜて飲むものだということが判明。
これは去年デンマークのカフェ「アモッカ」で買ったオリジナルチョコ棒
上のような昔風のカップがなんとなくホットチョコレートらしい感じがして好きなのだが、今回はマセッティで買ってきたチョコレートだから、ということで普段は使わないぎょろ目印のカップをひっぱりだしてきてホットチョコレートを作る。
自分でチョコレートを刻んで牛乳に溶かしたほうが好みの濃度になるような気もするけれど、それはとにかくもし彼のお母さんがまだ生きていたらきっと一緒にこのホットチョコレートを飲んでいたはずだ。自分が働いていた工場でまだチョコレートが作られているとわかったら喜んだだろうな。


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