■滋賀県は京都に隣接しています。ただし、「そうだ京都、行こう」、全国ブランドの京都の影に隠れてあまり知られていません。しかし、文化財を通してみてみると、重要文化財(国宝含)の指定件数は807件(2011年3月9日現在)で全国4位(1位東京、2位京都、3位奈良)、国指定文化財の薬師如来像(彫刻)件数は45件(2010年7月15日現在)で全国1位なのです。歴史ファンの皆さんはよくご存知のことではありますが、仏教美術に関しては、全国トップクラス、仏教美術の宝庫なのです。というわけで、滋賀県で開催される特別展をご紹介します。滋賀県の信楽にある「
MIHO MUSEUM」、大津市の瀬田にある「
滋賀県立近代美術館」、大津市の大津京にある「
大津市歴史博物館」の三館が連携して
特別展「神仏います 近江」を開催します。「MIHO MUSEUM」と「滋賀県立近代美術館」ではすでに始まっています。
■特別展の概要です。
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「神仏います近江」を共通テーマに掲げ、滋賀県立近代美術館・大津市歴史博物館・MIHO MUSEUMの三会場に於いて、9月から12月にかけて開催されます。仏教・神道美術の宝庫、近江の名品が3つの会場に会し、近江の歴史の根幹をなす宗教文化に、3つの視点で迫る過去最大規模の展覧会となります。
信楽会場【MIHO MUSEUM】では、「天台仏教への道 −永遠の釈迦を求めて−」と題して、日本仏教の母山と称される天台仏教の確立までを、瀬田会場【滋賀県立近代美術館】では、「祈りの国、近江の仏像 −古代から中世へ−」と題して、平安から鎌倉、室町時代に亘る仏像の変遷を、大津会場【大津市歴史博物館】では、「日吉の神と祭」と題して、古事記にも記述がみえる比叡山延暦寺の守護神、日吉大社の祈りの歴史をテーマに展示を行います。
3館合わせて300件を超える展示作品を通して、日本人の心に受け継がれてきた信仰の源流と、近江の豊かな歴史や文化に触れていただく機会となれば幸いです。
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■以下は、それぞれの会場ごとのテーマ解説です。
こちらから、転載しました。
■信楽会場「MIHO MUSEUM」「天台仏教への道 −永遠の釈迦を求めて−」。
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「釈迦入滅、偉大なる教祖の死はまさに一大事でした。僧たちは釈迦の生前の教えに従い、法と戒をよりどころとして修業に励みました。一方、在俗の人々は舎利を祀り、塔を作って釈迦その人を慕う気持ちを募らせていったのです。
釈迦入滅後、数百年を経てこれらの人々の間から起こったと考えられている大乗仏教は、インド古来の神々も巻き込みながら次第に仏、菩薩の数を増し、あらゆる世界に仏が遍満する究極の宇宙観を形成して行きました。奈良時代の末期に比叡の霊峰に登った最澄は、ここを拠点として、これら膨大な教えの中から法華経を基盤とする天台宗を創設します。
信楽会場では近江伝来の仏像・仏画・神像などを中心に展示し、大乗仏教とともに拡大深化し、両界曼荼羅に至る仏教世界の進展と、近江はもとより、わが国の宗教界に多大な影響をもたらした最澄、円仁、円珍らによる天台仏教の確立までの道のりを概観します。
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■瀬田会場「滋賀県立近代美術館」「祈りの国、近江の仏像 −古代から中世へ−」。
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平安時代から鎌倉、室町時代にいたる近江の仏像は、比叡山延暦寺による拠点寺院の創設によって、早い時期から完成度の高い作例が近江各地に造像され、やがて天台王国とも呼ばれる近江の仏教美術の特徴を形成して行きました。一方、地域社会の中でも仏像が広汎に受容され、現在における文化財の宝庫といわれる近江の伝統文化の姿がはぐくまれて行きました。
瀬田会場では平安時代から鎌倉、室町時代へと大きく社会が変化する時代、近江の仏像を中心とした仏教造形の変遷と、これを支えた地域社会とのつながりの具体相などをご覧いただきます。
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■大津会場「大津市歴史博物館」「日吉の神と祭」
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日吉の神々は、比叡山延暦寺の守護神として崇敬をうけ、神と仏が融合した独特の世界を形作ってきた社として知られており、その姿は、山王曼荼羅図 をはじめとするさまざまな神仏習合の美術作品として残されています。また、この神々を祭る「山王祭」は、湖国を代表する勇壮な春祭りとして著名で、神々が里に幸いをもたらすべく、1ヶ月半に及ぶ行事が展開します。その姿は、湖と山々が織り成す景観とあいまって人々を魅了し、絵画の画題にも取り上げられてきました。本展では、日吉社にまつわる神道美術の数々や、山王祭にかかわる作品を展示し、人々が日吉の神々に捧げてきた祈りの歴史を紹介します。
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■この特別展、ぜひ行ってみたいものです。「滋賀県立近代美術館」は、勤務するキャンパスに隣接していますから、なんとか行ける…かもです。「大津市歴史博物館」も、なんとか…かな。しかし、「MIHO MUSEUM」は…どうだろう。家族と一緒に車で一気に回ってみましょうかね。それにしても、トップの写真、美しいですね〜。琵琶湖の奥座敷ともいえる、湖北の琵琶湖を写したものではないかと思います。竹生島(ちくぶじま)らしき、島影が見えます。しかし、です。この特別展とは関係しませんが、この美しい風景のすぐ背後には、若狭の原発がならんでいます。複雑な気持ちだな…。
【追記】■この特別展、かなり「力」が入っています。2つの美術館と1つの博物館が協力して開催されるのですから。twiiterやfacebookの公式アカウントもあります。
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■USTREAMでは、3館の学芸員の皆さんの解説をご覧いだけます。これは勉強になります。

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