「Another PHASE−51 『ターミナル』」
ガンダムSEED
メサイア宙域の攻防戦から、1年半が経った。
戦闘終了後、ザフト艦ミネルバの艦内通路で、
タリア=グラディス及びギルバート=デュランダル
両名の遺体が発見された。
調べたところ、グラディス艦長がデュランダル議長を
拳銃で射殺した後、自殺したものとみられている。
ミネルバは、ザフト軍内でも最も大きな被害を被った。
デスティニーとレジェンド、2体の新型ガンダムは破壊され、
両機のパイロットも戦死が確認された。
また、新型MA・セツナに搭乗したミーア=キャンベルも、
敵MSとの戦闘によって死亡している。
そのような状況下、唯一無事に帰艦したインパルスガンダムだが、
パイロットであるルナマリア=ホークは終戦後にザフトを退役、
行方不明となっていた。
一方、オーブ軍にも行方不明者が出ている。
キラ=ヤマト。
そして、ラクス=クライン。
戦闘終結から半年後、突如として行方を眩ませた。
最も平和に貢献した英雄の、突然の失踪。
首長・カガリ=ユラ=アスハの命によって捜索が続いて
いるが、二人の行方は杳として知れなかった。
そして。
「…………」
アスラン=ザラは、慰霊碑の前に跪いていた。
瞳を閉じ、静かに祈りを捧げる。
やがて立ち上がると、足元の花を見つめてため息をついた。
「キラ……」
今、お前はどこにいるんだ?
どこで何をして、何を考えている?
何故、俺や皆の前から、姿を消したんだ?
多くの犠牲を払って、ようやく手に入れた自由と平和なのに。
だが、どこにも答えは無かった。
諦めたように再びため息をつくと、アスランは愛用の
サングラスを着け、その場を立ち去ろうとした。
その時。
カラ……カラ……
背後から物音がして、思わずアスランは振り返った。
「キラ!」
『……の、わけがないか』
思わず自嘲する。
案の定、そこにキラの姿は無い。
ベビーカーを押した、長髪の女性がいるだけだった。
女性はゆっくりと、慰霊碑の前に進む。
アスランは軽く会釈するが、女性は全く反応しない。
ただ跪き、祈りを捧げ、立ち上がる。
訝しげに眺めていると、彼女は足元の花に視線を移した。
「……?」
そして、その花を無残に踏みにじる。
「なっ……何を!?」
「……誤魔化せませんよ」
「えっ?」
初めて聴いた女性の声。
だが、アスランは奇妙な既視感に襲われていた。
『俺は、この声を知っている…?』
「どんなに綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす。
だったら最初から、花なんて咲かなければいい」
「それは、どういう……」
アスランと、女性の瞳が合った。
悲しみと絶望を宿した、彼女の瞳。
「……そうは思いませんか、オーブのアスラン=ザラ?」
「何故、俺の名前を……」
突然、ベビーカーの赤ん坊が、急に泣き出した。
女性は赤子の前にしゃがむと、その頭を優しく撫でる。
「よしよし……もう、お家に帰ろうね……シン」
「……っ! 君は……」
アスランは、気付いてしまった。
だが、何も言えない。
女性が立ち上がり、ベビーカーを押して去ってゆくのを、ただ
見つめることしか出来なかった。
「キラ……」
俺たちは、本当に正しかったんだろうか?
俺たちの勝ち取った自由は、平和は、本当に正しかったんだろうか?
確かに、運命を変えることは出来たかもしれない。
でも……。
「俺は本当は、何が欲しかったんだ……キラ……」
呟くアスラン。
その問いに答えてくれるはずの友は、どこにもいなかった。
というわけで、前回・前々回に引き続き、種デスの
私的妄想IF最終回でした。
3回にわたって駄文にお付き合いくださった皆様、
本当にありがとうございました。
※お詫び
第44話の感想をUPした際、多くの皆様から
トラックバックしていただきましたが、管理人
多忙のため、大多数の皆様に御礼のコメントを
することが出来ませんでした。
この場を借りて御礼申し上げると共に、コメント
出来なかったことをお詫びいたします。