朝起きてから出掛けるのには、かなりのリスクがある。昨夜家を出て、登山口の札掛には二時に着いた。登山口を確認してから、駐車場に入り、すぐに横になった。
車が止まり、男性の声がして、目が覚めた。時計を見ると七時を過ぎていた。急いで支度をして、歩き始めた。(丹沢ホーム)手前に道標が立ち、石段を上っていく。小沢を渡ると、登山道になり、尾根を右から巻いて行く。
雲が広がり、太陽は顔を見せない。右下が切れ落ちている道には、幾つか橋が掛かっていた。何も食べていないせいか、切れ落ちた斜面を見ると、フラフラっとめまいがした。間もなくテーブルのある尾根に出たが、道は、やはり尾根には上がらず、トラバース気味の踏み跡を追っていく。
(上ノ丸)への急な上りをゆっくりと上っていくと、道は、ピークを通らず、左側に付けられていた。帰りに立とうと、先へと歩を進めて行く。杉木立の中を少しずつ標高をあげて行く。壊れたベンチのある樹林の中で、一休みして、饅頭を口の中に押し込んだ。静かである。この先は、尾根歩きになるようだ。
腹が少し落ち着いたところで、腰をあげ、歩き始める。右手前方に山々が見えてきた。両側には、食害対策用のネットが張られ、ずっと続いていた。標高はけっこうあるのに、里山を歩いている様な気持になる。
やがて、沢からの道を左に見、少し歩くと、朽ちた木段があり、急な斜面を上っていく。間もなく、小広いピークに上り着いた。(新大日茶屋)が立ち、道標が立っている。『新大日ノ頭』である。見晴らしのいい場所だった。テーブルに腰をおろして、しばらく休んだ。
かなりの汗をかいたが、やはり、風は冷たく、すぐに身体が冷えてきた。少し下り、登り返していく。(木ノ又小屋)を過ぎ、ピークに立つと、雪を被った富士山が、美しい姿を現した。右側には、目指す(塔の岳)が大きく立っていた。
鹿が懸命に草を食んでいる。顔をあげて、こちらを見たが、又草を食べ始めた。近くに寄っても知らん顔である。完全に無視されてしまった。石のゴロゴロした斜面を登りきると、(尊仏山荘)の立つ、『塔が岳』山頂である。中央に大きな山名標柱が立ち、十人位の人が居た。ここにも鹿が草を食べていた。富士山には、雲が掛からず、その美しい姿を惜しみなく見せている。テーブルに座って、しばらく風景を楽しんだ。
下りに、(上ノ丸)に登ったが、岩だらけの尾根で、足を石に引っ掛けて転んだ。手で身体を支えきれず、おでこを石にぶつけた。血は出なかったが、大きなコブが出来て、かなり痛んだ。気を付けようと思った矢先の事だった。
車に戻り、傷はたいしたことが無かったので、(ヤビツ峠)に向かう。けっこう車が止まっていた。ここでは、下りの人に何人も会った。2時間で戻れるだろうと歩いたが、思う様に足が進まなかった。
『大山』山頂は、見晴らしが良かった。喉を潤し、汗を拭いて、テーブルに腰をおろして、少しの満足の時を過ごした。結局、2時間は掛からず、往復できた。

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