谷脇康彦(たにわき・やすひこ)  84年、郵政省(現総務省)入省。OECD事務局(在パリ)ICCP課(情報・コンピュータ・通信政策課)勤務(87-89年)、電気通信局事業政策課課長補佐(93-97年)、郵政大臣秘書官(99-00年)、電気通信局事業政策課調査官(00-02年)、在米日本大使館ICT政策担当参事官(在ワシントンDC、02-05年)、総合通信基盤局料金サービス課長(05-07年)、同事業政策課長(07-08年)を務め、08年7月より現職。ICT政策全体の総括、通信・放送の融合・連携に対応した法体系の検討、ICT分野の国際競争力向上に向けた施策展開などを担当している。著書に「世界一不思議な日本のケータイ」(08年5月、インプレスR&D)、「インターネットは誰のものか」(07年7月、日経BP社)、「融合するネットワーク」(05年9月、かんき出版)。日本経済新聞(Nikkei Net) ”ネット時評”、日本ビジネスプレス”ウォッチング・メディア”などへの寄稿多数。

2007/10/26

インターネットが変える、インターネットを変える (PART1)  ブロードバンド政策

インターネットを巡る7つの視点

変質するインターネット

ここ10年でインターネットは急速に普及し、あらゆる社会経済活動の基盤となりつつある。かつて“デジタルエコノミー”と呼ばれた「リアルな取引をサイバー空間での取引で代替することによる効率化」というステージから、「サイバー空間での新しい価値の創造と新事業の創出」というステージに既に入ってきている。

ネットワークの中立性

 巨大化・商業化するインターネット。その分析の枠組みとして、ネットワークの中立性という議論がある。総務省「ネットワークの中立性に関する懇談会」報告書(07年9月)は、ネットワークの中立性の基本原則を、以下の3項目に整理している。
1) 消費者がネットワーク(IP網)を柔軟に利用して、コンテンツ・アプリケーションレイヤーに自由にアクセス可能であること。
2) 消費者が法令に定める技術基準に合致した端末をネットワークに自由に接続し、端末間の通信を柔軟に行なうことが可能であること。
3) 消費者が通信レイヤーやプラットフォーム(認証・課金、QoS制御等の機能)レイヤーを適正な対価で公平に利用可能であること。
 こうした基本原則はどのように維持していくことができるだろうか。そのためには、より具体的な視点で議論していくことが有益だ。インターネットを巡る7つの視点(懸念)を挙げてみよう。

視点1:インターネットはインフラとして耐え得るのか? 

 インターネットは研究者間のネットワークから巨大化・商業主義の一途をたどって来た。インターネットの基本精神は「自律・分散・協調」だが、これは巨大化・商業化が進む中で維持できるのか。2010年代初頭には現在のIPv4アドレスは枯渇する可能性がある。IPv6への円滑な移行を図り、意識することなくネットワーク化が実現するユビキタスネットワークは実現可能だろうか。
現在ネットワーク上を流通するトラフィックは2年で2倍のペースで急増している。ユビキタス化の進展はトラフィックの増加速度をさらに加速化させ、インターネットの「自律・分散・協調」が崩壊する可能性はないか。
 ネットワーク混雑に対処するため、既に関係者の間ではP2Pなどのコンテンツ配信技術を活用したスケーラブルなネットワークの実現に向けた取組みが始まっている。しかし、現実のトラフィック流通量がネットワークの供給能力を越える可能性もある。その場合、帯域制御はどこまで認められるのだろうか。道路、水道、電力、港湾-----いずれのインフラ基盤も、利用の公平性や運用の透明性が求められる。インターネットはインフラとしての要件を満たし得るだろうか。

視点2:セマンティックウェブは実現可能か?

 インターネットは、検索技術の進化によって様々な情報を効率的に引き出すことが可能となり、爆発的に普及した。さらに最近では、新しいビジネスモデルが登場し、プロ・アマを問わずコンテンツ等をネット上に供給し共有することによって、新たな価値が創造されるようになってきている。情報をネットから引き出し、情報をネットに投げかけ、ネット上で共有し、そこに利潤機会が生まれている。
 ソーシャルタグのような情報のタグ化も進んでいる。しかし、ネット上に、新旧を問わず、管理不能なほど膨大な情報が集積されるようになり、本当に必要な情報を整理して効率よく手に入れることは今後とも可能だろうか。今のインターネットの構造のままで、果たしてセマンティックウェブは実現可能だろうか。改良に改良を重ねてきたインターネットは、サイバー空間における情報爆発に耐えられるだけの安定性を持っていると言えるだろうか。

(以下、PART2に続く)
 
本稿は、11月15日発行のJPNICのニュースレターに寄稿したものです。11月22日開催のInternet Week 2007(JPNIC主催)でのセッション"IP Meeting / Internet Forum 2007"での議論の叩き台となります。なお、本文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解です。
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